「お前、体が変だぞ。病院行きなよ」先輩記者からの決定的な一言
だが、むくみはその後も一向に引かない。酷暑は過ぎたのに、疲れはたまる一方だった。やがて、外見にも変化が表れる。顔と手の甲が腫れぼったくなり、赤みを帯びてきた。さらに、体を動かすと腰や膝が痛い。歩くとすぐに息切れするようになった。晩秋の月だった。
上司や同僚に心配され始めたのもこのころからだ。そして年末、先輩記者と会社で擦れ違った時、決定的な一言をかけられた。
「お前、体が変だぞ。病院行きなよ」
むくみは日々、ひどくなっていく。それでも「忘年会続きの肥満」と自己診断し、炭水化物を抜くダイエットを始めた。偉丈夫を信じ、周囲の心配と忠告に耳を傾けなかったのだ。
明けて2017年元日、久々に川崎市の自宅に一時帰宅した。体重は増え続け、妻からも病院行きを強く促されたが、ダイエットをしていることを理由に突っぱねた。体の異変を認めつつ、病院に行くことが怖かったのだ。
75キロだった体重が100キロを超えていた
1月31日。むくみはいよいよひどくなり、特に下半身は尋常でなかった。睾丸が「たぬきの置物」のそれのように腫れ上がり、太ももは2倍近くになった。体中が痛い。膝の裏は、皮膚がズボンと擦れて水が染み出るようになっていた。息切れもひどく、50メートルほど歩くと立ち止まって息を整えた。それでも職場では平静を装い、沖縄に飛んだ。プロ野球、中日ドラゴンズの担当となり、気合がみなぎっていた。
が、そこでの日々は――。
沖縄県中部、北谷公園野球場(北谷町)での1軍キャンプの取材は“地獄”だった。練習の合間に移動中の選手を追いかけて話を聞くのだが、ついて行けないのだ。他社の記者に助けを仰ぎ、球団広報に「早く病院に行ってください」と心配される始末だった。
ホテルに戻って体重計に乗ると、以前は75キロだった体重が100キロを超えていた。腎臓病であることは、疑う余地がなかった。慢性腎臓病が進むと、体にむくみが表れるのだ。それはまず顔と足に出やすい。すねや足の甲、目の周りに腫れが見られたら「黄信号」。体の複数箇所がむくむのは「赤信号」。