アイドルという虚像をはぎとった

ある日、家でテレビを見ていたらあの6人がバラエティー番組に出ていた。

6人の中の1人が、「僕らアイドルなんで~」とアイドルであることをフリにして、自虐の言葉を言った。アイドルはアイドルであってその虚像の中で生きなければならなかったはずだ。

でも、彼らは「アイドルなのに、それは仮面なんですよ! 嘘なんですよ!」と認めて、そんな自分たちのことを笑いにした。

それまでのアイドルが伝えることのなかった究極のリアル。

僕は思わず。

笑った。

今までアイドルがやらなかったソレをアリにしてやっていくのなら。

何かが変わるかもしれないと思った。

アイドルに本当のおもしろさなんて必要なかったはずなのに。

おもしろかった。

僕は嫉妬した。

だけどその嫉妬の奥には、ワクワクした思いがあった。

「キラキラ」の逆を行った格好よさ

彼ら6人は力を合わせて、アイドル像を壊した。

壊し続けていくことで、周りの人たちが彼らに振り向いていった。

アイドルなんかで笑うもんかと思っていた男子も、その彼らの必死さを認めだした。

彼ら6人は、にらめっこで勝っていったのだ。

新たな形のアイドルに、みんなが徐々に魅了されていった。

それまでのアイドルが歌っていた歌はアイドルソングと言われるジャンル。キラキラして、少年っぽさがある。曲を聞いただけで、それを歌い踊る時の衣装がイメージ出来るものだった。

バイオレットの背景にステージ上のマイク
写真=iStock.com/Berezko
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それまでのアイドルと比べるとCDの売り上げが上がらなかった彼らの曲が、大きく変化し始めた。

90年代の日本のクラブブームとともに、クラブミュージックのようなサウンドと、その時代を生きる若者たちのリアルな空気感も入れ込んだ歌詞。

そんな曲を、キラキラした服を着て笑顔を作り、オーバーな振り付けで歌うのではない。

逆を行く。

音楽のプロたちも、彼ら6人の曲を「格好いい」と評し始めた。

アイドルの曲が流れることのなかったFM局でもかかり始めた。

大人が。世の中が。彼ら6人という新たなアイドルを。

認めて。おもしろがり始めた。