うまくいかなくなるのではない。最初からうまくいっていない

ところが知事はプロジェクトを白紙に戻さず、縮小するにとどめた。これはおそらく「サンクコスト(埋没費用の錯誤)」が世間にどう受け止められるかを熟慮したうえで、計画を白紙撤回すればすでに投資した数十億ドルを「どぶに捨てる」ような印象を与えかねない、と判断したからに違いない。

その結果、州の納税者はますます深みにはまり、縮小版のプロジェクト――最初に提示されていたら絶対に承認しなかったであろうプロジェクト――に、さらに数十億ドルをつぎ込む羽目になった。

残念だが、これが典型的なパターンだ。プロジェクトというプロジェクトが、形だけの性急な計画立案を経て、すばやく始動する。計画が実行に移されるのを見て、誰もが満足する。だが計画フェーズで見過ごされ真剣に検討されなかった問題がすぐに露呈し、急いで事態の収拾に奔走する。するとまた別の問題が発生し、さらに奔走する。

ベント・フリウビヤ『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』(サンマーク出版)
ベント・フリウビヤ『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』(サンマーク出版)

私はこれを「故障と修理のループ」と呼んでいる。このループに陥ったプロジェクトは、タールの沼から這い上がろうともがくマンモスに似ている。

プロジェクトが「うまくいかなくなる」と言うが、この言い方には語弊がある。プロジェクトはうまくいかなくなるのではない。最初からうまくいっていないのだ。

ここで重大な疑問が湧いてくる。「ゆっくり考え、すばやく動く」が賢明なアプローチなら、なぜ大型プロジェクトのリーダーはその逆のことをやってしまうのだろう? この問いへの答えは『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』(サンマーク出版)で示したい。

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