プロジェクトは2つのフェーズに分けて処理する

プロジェクトをすばやく完遂するための正しい方法を理解するために、プロジェクトが2つのフェーズに分かれていると考えてほしい。

かなり単純化した説明だが、そう考えるとわかりやすい。最初のフェーズが「計画(プランニング)」、次が「実行(デリバリー)」だ。呼び方は業界によってまちまちで、映画業界では「開発」と「制作」、建設業界では「設計」と「建設」などと呼ばれる。だが基本の考え方はどこも同じだ。まず考え、それから動く。

プロジェクトはビジョンから始まる。ビジョンはプロジェクトの漠然とした完成イメージでしかない。計画フェーズではただのビジョンを、信頼性の高い実行のロードマップとなる、徹底的に調査、分析、検証された詳細な計画に変えなくてはならない。

ほとんどの場合、計画はコンピュータや紙、物理的な模型を使って立てられるから、このフェーズはそれほどコストがかからず、リスクも少ない。余裕があれば、計画にたっぷり時間をかけても問題ない。しかし、実行となると話は別だ。実行フェーズでは大金が投入されるため、プロジェクトがリスクにさらされやすくなる。

「トイ・ストーリー」の会社が開発期限を設けない理由

たとえば、新型コロナの感染拡大が始まろうとする2020年2月に、ハリウッドの監督が実写映画に取り組んでいたとしよう。このプロジェクトはどれだけの損害を被るだろう? それはプロジェクトがどの段階にあるかによって異なる。

もし脚本を書き、絵コンテを切り、ロケ撮影の予定を立てている段階なら、パンデミックは問題だが、災難ではない。実際、コロナ禍でもほとんどの作業が継続されるだろう。

だが、もしパンデミックが勃発したときに、監督が100人のクルーを引き連れて、ニューヨークの街角でギャラの高い映画スターの撮影を行っていたら? あるいは、映画が完成し、劇場公開をひと月後に控えているときにコロナ禍が始まり、映画館が休館になったら? その場合は問題ではなく、災難になる。

計画フェーズは安全な港で、実行フェーズは荒波での航海だ。だからこそ、伝説的映画スタジオのピクサーでは、「監督は映画の開発フェーズに何年もかけることを許されている」と、共同創業者のエド・キャットムルは言う。ピクサーは「トイ・ストーリー」に始まり、「ファインディング・ニモ」や「Mr.インクレディブル」「ソウルフル・ワールド」などの時代を代表するアニメーション映画を制作してきた。