テスラの工場は元はトヨタの工場

さらに、閉鎖予定であったトヨタとゼネラルモータース(GM)のカリフォルニア州合弁工場を4200万ドル(約65億円)という破格の安値で譲渡した。

加えて、トヨタはテスラから数億ドル分もの排出権クレジットを購入し、カリフォルニア州などの厳しい州の規制に対応している。

このように、ある意味においてテスラはトヨタのおかげで大きくなれたといっても過言ではない。

この「弟子」の時価総額は当初、「師匠」の足元にも及ばなかった。

しかし、2018年2月に、「ハイテク株の女王」と呼ばれる名物投資家、キャシー・ウッド氏が、当時300ドル近辺であったテスラ株が4000ドルにまで達すると予言する。

当時、資金繰りや生産遅延の問題を多く抱えたテスラや、その総帥であるマスク氏を信じる人はあまりおらず、ウッド氏はウォール街の笑いものになった。

投機筋を中心にテスラ株に買いが殺到

ちょうどこの頃、マスク氏はテスラの時価総額がその先10年間に6500億ドル(約99兆円)を超えた場合に、その1割に近いおよそ560億ドル(約8兆4200億円)を、2020万株のストックオプションとして受け取れるというパッケージを取締役会と株主に提案し、承認されている。

果たして、翌2019年に中国の上海工場が稼働し、米国内の生産も安定化して軌道に乗ると、投機筋を中心にテスラ株に買いが殺到。株価はあっという間に急騰し、2021年1月にはウッド氏の予言通り4000ドルを突破してしまった。

金融技術の概念
写真=iStock.com/metamorworks
投機筋を中心にテスラ株に買いが殺到(※写真はイメージです)

そして、2021年1月には民主党のバイデン大統領が就任し、米国のEVシフトにより地球温暖化ガスの排出量ゼロを目指す規制を掲げる。

すると、米ニューヨーク・タイムズ紙が3月9日付の解説記事において、「栄華を誇る日本の自動車産業は今や取り残される危機に瀕している」と論じた。もちろん「現時点ではハイブリッド車が現実的な解」と主張するトヨタを念頭に置いたものだ。

同年7月25日付の記事に「トヨタはクリーンカーをリードしてきたが、今やクリーンカーを遅らせようとしていると批判されている」という見出しが付けられた。