テスラ株は「バイデン銘柄」

さらに同年8月6日付の記事では、「バイデン政権は、2030年の米国内自動車販売の半分をEVにするという目標を打ち出した。この大統領令は米国内で販売されるEVの3分の2を製造する米テスラにとりよい知らせだが、日本のトヨタにとっては悪いニュースだ。いまだに内燃機関車を販売する(トヨタのような)企業はジリ貧になろう」と予想している。

こうした米メディアの論調を念頭に、米調査企業ファクトセット・リサーチが追跡した、「テスラの時価総額がトヨタの何倍で推移したか」を示したグラフを見ると、2021年8月にEV大統領令が発布され、それに乗る形でレンタカー大手の米ハーツが10万台のテスラ車を42億ドル(約6554億円)で購入すると発表した2021年11月、そしてバイデン大統領の経済政策の目玉で、EV普及に向けた補助金支出が主眼のインフレ抑制法(IRA)が成立した2022年8月の後に、一時5倍近くに達している。

この時期のトヨタ株の上昇は限定的であった一方、テスラ株は大化けしていた。つまりテスラは、環境規制やEV購入補助金への期待で急騰した「バイデン銘柄」であったことがわかる。政治と商売は切り離せないのだ。

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写真=iStock.com/rkankaro
政治と商売は切り離せない(※写真はイメージです)

テスラの販売台数は前年同期を大きく下回った

ところが、テスラの時価総額は2021年から2022年にかけての「トヨタの5倍近く」という水準から、今年に入り一時、「1.5倍未満」まで下げている。年初来の下落率は、最大40%を超えた。

これは、バイデン政権が掲げる非現実的なEVシフト目標と実需の乖離が広く認知され、ウォール街が現実に立ち返ったからだと考えられる。

加えて2023年後半から各種世論調査の経済政策面における支持率で、バイデン大統領はトランプ前大統領に負け始めているが、テスラ株の下落はこれと時期が重なる。

具体的な数字を見ると、直近の2024年1~3月期にテスラ販売台数は大幅な値引きにもかかわらず38万7000台と、市場予想の販売台数である44万9000台を大きく下回っている。

この実績は、前年同期の48万4000台より約10万台も少なく、売れずに積み上がった在庫は16万台に達したとブルームバーグは推定している。