最も危険なのは、前頭葉の老化である

「顔のシワ」はさらに仕方ないことです。

私たちの肌には、コラーゲンやエラスチンといった弾力性やハリを形成するのに役立つたんぱく質が含まれています。

コラーゲンやエラスチンは「性ホルモン」がその生成をうながすといわれているのですが、年齢を重ねると誰しも、性ホルモンの分泌自体が減少してしまいます。

シワもカサカサ肌も、スキンケアだけでは限界があります。年齢を経るごとに性ホルモンの合成は減少していきますから、肌も次第に衰えていく。

これはやはり仕方のないことです。

しかし、先ほど私は、「本当の老化が始まるのは、肉体的な衰えからなのではありません」と言いました。

「本当の老化」は、もっと別の場所から始まる、と。

では、いったい何が衰えると、「本当の老化」が始まってしまうのでしょうか?

結論を先に言いましょう。

脳の中の「前頭葉」の機能が衰えると、本当の老化が始まるのです。

前頭葉は、大脳の前方に位置する部分です。

前頭葉の主な役割は、「感情」や「意欲」をコントロールすることといわれています。

ですから「前頭葉の機能が低下する」ことは、すなわち、感情や意欲が劣化してしまうことになります。

最近どうも意欲が湧いてこない……。

感情が乏しくなった気がする……。

そんな状態であれば、あなたの前頭葉は、劣化が始まっているのかもしれません。

「そう言えば……」と思い当たりませんか?

老眼で小説が読みづらくなったり、俳優の名前が思い出せなかったりもさることながら、それ以上に、小説を読んでも映画を観ても、若い頃のように“血湧き肉躍る”ような感動を味わうことが減っている……。それどころか、読みたい、観たいという意欲も衰えてくる。

私が「本当の老化」と指摘したいのは、まさにここなのです。

めっきり感動が減った。

感動が減ったから、意欲もやる気も湧いてこない……。

それこそが、「本当の老化」が、静かに、しかし確実に進行している証拠なのです。

私はそんな状態を、「前頭葉がバカになった状態」と呼んでいます。

「前頭葉バカ」になってしまった状態。

あえてキツい言葉を使うのは、それだけの理由があるからです。

「毎日の本や新聞」で脳を鍛えられるという誤解

「前頭葉が衰える? いやいや、私は毎日のように本や新聞を読んで、脳を刺激しているから問題ないよ」
「『前頭葉バカ』だって? ハハハ。俺は毎日、仕事をきちんとこなしているから、脳の衰えとは無縁だよ」

読者の中にはそう思われる方もいるかもしれません。

しかし残念なことに、ただ漫然と読書をしたり、仕事をソツなくこなしたりしているだけでは、前頭葉の衰えを防ぐことはできません。

たとえば「読書」という行為は、文字列の内容を認知して、理解する作業です。

大きな古い椅子にハードカバーの本を読んでいるアジアの女性
写真=iStock.com/SteveLuker
※写真はイメージです

言語の認知や理解、言語の記憶を司るのは、脳の両側面に位置する「側頭葉そくとうよう」という部分。

読書しているとき、脳は、ほとんどこの側頭葉しか使っていません。いつもの馴染みの著者の本や、毎朝、習慣的に読んでいる新聞の場合はなおさらです。

また、決まり切った仕事を毎日ルーティンのように続けているだけでは、脳は省エネモードになって、ラクをしようとしてしまいます。

いずれにしても「前頭葉」はほとんど使われていません。だから、読書を大量にしたり、単に現役で仕事を続けていたところで、前頭葉を活性化することはできません。