貧しい若者をだまして、外国人を最前線に送り込む

ウクライナ侵攻の長期化で兵員喪失に悩むロシア軍が、インドやネパールなど南アジアの人々を騙し、軍への入隊を強制している。海外メディアが相次いで報じ、その実態が明らかになった。

2024年4月2日、モスクワで開かれたロシア内務省理事会の年次拡大会議に参加するウラジーミル・プーチン大統領(この画像はロシアの国営通信社スプートニクが配信したものである)。
写真=AFP/時事通信フォト
2024年4月2日、モスクワで開かれたロシア内務省理事会の年次拡大会議に参加するウラジーミル・プーチン大統領(この画像はロシアの国営通信社スプートニクが配信したものである)。

募集はTikTokやYouTube、Facebookなどのソーシャルメディアの広告で好待遇を売りにして若者の興味をかき立ている。南アジア現地にはリクルーターも存在し、ロシア送りの一端を担う。多くは「食料配達係」や「ウクライナ戦線から遠く離れた安全な警備職」、「軍事ヘルパー」などの甘言で釣り込んでいる。

英BBCやカタールの国営衛星テレビ局アルジャジーラが実例を報じている。南部ケララ州、のどかな漁村に生まれた漁師の男性(24歳)は、ロシア軍に騙されトラウマ級の日々を体験。生死の狭間をさまよったという。

男性は地元の斡旋業者に立ち寄り、ヨーロッパでの職を探していると告げた。だが、業者はロシアへの渡航を勧める。聞けば、負担の少ない警備員の募集で、月給20万ルピー(4月13日時点のレートで約37万円)の好待遇だという。

参考までに、インド求職サイトのグラスドアは、インドの平均年収を85万ルピー(約156万円)としている。年収5割増し以上をねらえる好機だ。

「それまでは銃を持ったことすらなかった」

男性の地元では、気候が不安定になり、海に出られる日数や漁獲量が減っていた。そのうえ、他に仕事はほとんどなかった。貧困から逃れるために男性は1月、男性は募集に飛び乗り、ロシア移住を決意した。

ロシアへは観光ビザで入ることになる。渡航ビザを工面するため、友人たちがひとり70万ルピー(約130万円)ずつを支援した。平均月収10カ月分にあたる大金だ。