足置き台が効果的な理由

なぜ足置き台が便秘を解消するのでしょうか。その背景には、座った姿勢よりもしゃがんだ姿勢の方が便秘になりにくいという考え方があります。

もともとヒトはしゃがんで排便しており、伝統的で自然な姿勢といえます。日本でも和式トイレはまだ残っていますね。座って排便するのに比べて、しゃがんで排便すると直腸と肛門の角度が開いて、よりまっすぐになります。骨盤の前のほうにある恥骨から直腸をぐるりととりまく恥骨直腸筋は、ふだんは便が漏れないように肛門をお腹側に引っ張っていますが、しゃがむ姿勢を取ることで緩むのです。

しかし、普段から椅子を使い、トイレでは西洋式便器を使う生活を続けていると、しゃがんだ姿勢を維持する筋力が弱ってきます。膝や腰を痛めた高齢者はなおさらです。そこで、しゃがんだ姿勢で排便できるようにするための補助装置が開発されたというわけです。

足置き台以外にも、さまざまなデザインの装置が提案されています(※2)。中には、足腰が弱って座ることも難しくなってきた患者さんが適切な位置で排便できるように、高さや傾きを調節できる電動式の装置までありました。ただし、残念ながら、まだ市販はされていないようです。

※2 A review on squat-assist devices to aid elderly with lower limb difficulties in toileting to tackle constipation

ロダンの「考える人」のポーズ

足腰が弱っていないならわざわざ装置を使わなくても、前かがみになり、かかとを少し上げて、ちょうどロダンの「考える人」のポーズを取ることで同じような効果を得ることができます。

ロダンの「考える人」像
写真=iStock.com/wesvandinter
※写真はイメージです

このことも、きちんと研究され論文として報告されています(※3)。便秘のため排便造影検査(デフェコグラフィー)を受け、通常の西洋式便器に座った姿勢で完全に排便ができなかった患者22人が対象です。排便造影検査とは、バリウムを含んだ疑似便(人工便)を直腸に注入し、エックス線で側面から透視しながら排便の様子を観察する検査法です。検査対象者に「考える人」の姿勢を取ってもらったところ、直腸と肛門の角度が開いてまっすぐに近くなり、22人のうち11人が完全に排便できました。「考える人」のポーズは、スムーズな排便にプラスの効果を与えるようです。

足置き台の使用や「考える人」のポーズで排便姿勢を整えることの大きな利点は、コストがほとんどかからないことです。排便姿勢だけで便秘がよくなるとは限りませんが、容易に実行可能なことは大きな利点です。食生活や水分摂取、適度な運動など他の生活習慣の改善と組み合わせることで効果が期待できます。

※3 Influence of body posture on defecation: a prospective study of "The Thinker" position