なぜか「インテルの発明」と説明した東芝

東芝が発明したフラッシュメモリは結局ライバルのインテルに市場シェアを奪われましたが、舛岡のフラッシュメモリの発明について、フォーブス誌が東芝にインタビューしたところ、非常に奇妙な返答が返ってきます。

「広報担当者は本誌に対し、フラッシュメモリを発明したのはインテルであると、繰り返し主張した。一方インテルは東芝がフラッシュメモリを発明したと主張しているのだ」

しかしニューヨークの米国電気電子学会(IEEE)は東芝在籍中のフラッシュメモリ発明の業績をたたえ、舛岡にモーリス・N・リーブマン賞を贈与しています。

フォーブス誌がその点を東芝に改めて問いただすと、フラッシュメモリを発明したのは東芝であることをようやく認めたそうです。せっかくの日本人の発明を、日本人がインテルの発明とするなど、考えられないことです。

発明者が正当な利益を得られないという現実

日本で業績を正しく評価されないことに不満に感じている研究者は、舛岡氏だけではありません。青色LEDを発明した中村修二は、2001年、勤務していた日亜化学工業を相手に訴訟を起こし、中村氏は現在、アメリカで暮らしています。おそらく数多くの表に出ていない例がほかにもあるはずです。

木谷哲夫『イノベーション全史』(BOW BOOKS)
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舛岡氏や中村氏の例のように、発明者が正当な利益を得られないのは、必ずしも企業側の責任だけとは言えません。初めに何も権利を主張せずに、後になって利益の一部を還元してもらうのは、かなり困難だからです。発明の正当な対価を得ようとするなら、社外に目を向け、市場の力を借りることも一つの考え方として大事になります。

たとえば、発明者自身が株式の一部を保有する形で、所属する会社と共同で会社を設立するのです。製品化がうまくいき、売れた場合は利益の一部を配当で受け取れますし、もし上場や売却ができれば、巨額のキャピタルゲインが可能になります。

オープンイノベーションの時代には、発明者は、会社だけに頼らない方法も、自分を守るための基礎知識として学ぶ必要があるのです。

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