TSMCのおかげでスタートアップが続々と誕生
現在、世界でファブレスの半導体メーカーは1000社を超えています。設計だけに注力し、巨額の設備投資が必要な製造はTSMCのような専門業者に任すことができるからです。もしモリス・チャンがファンドリーを始めなかったら、このような数多くの半導体開発企業の誕生はなかったでしょう。
その中の一つがエヌビディア(NVIDIA)です。
GPU(編集部注:Graphics Processing Unitの略称で、映像の処理を専門に行うプロセッサを指す)の設計に特化し企画設計と販売を行い、製造はファンドリーに外部委託するファブレスメーカーです。シリコンバレーで働いていたジェンスン・フアン(社長兼CEO)が設立しました。
ジェンスン・フアンは1963年生まれの台湾系アメリカ人で、台湾の台南市に生まれ、アメリカに移住してオレゴン州立大学で電気工学の学士号、スタンフォード大学で電気工学の修士号を取得します。
大学卒業後はAMDのマイクロプロセッサの設計者などを経て、1993年30歳の誕生日にエヌビディアを設立し、現在に至るまでCEO兼社長を務めています。
エヌビディアの時価総額は320兆円に
ちなみにAMDのリサ・スーは、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOと親戚で、台湾人の活躍には恐るべきものがあります。
エヌビディアはグラフィックスを得意とし、2001年にはマイクロソフトと共同開発したXboxを発売、2004年には、ソニーとPS3のGPUを共同開発したことで実力をつけ、2017年にも任天堂とニンテンドースイッチを共同開発しています。
顧客の高度なニーズに応える形で実際の開発に従事し、その過程で実力を蓄えていったということがポイントです。その後はAI向けに注力し、現在もAI向けのプロセッサを発表し続けています。
現時点(2024年3月7日終値)でのエヌビディアの時価総額は実に2.22兆ドルに達しています(1ドル150円として320兆円)。