「なかったふりをする」は親が培うべきスキル
注目は「ごほうび」の1つであることを思い出してください。よい行動を育むことに集中しようとしているまさにそのときに、悪い行ないにごほうびを与えたくないでしょう。最も重要なことを優先し、(当面は)他は無視してください。
例えば、就寝前のルーティンに取り組んでいるならば、子どもがズルズルと音を立ててシリアルボウルから牛乳を飲んでいても無視しましょう。無視するとは、言葉でも態度でも、視線ですらも反応しないということです。それが無理なら、部屋を離れましょう。
当然ですが、人をたたく、物を投げつける、親の指示に従わないといったことは無視できません。でも、めそめそする、駄々をこねる、すねる、注目を浴びようとする、相手にしてほしくて親を困らせる、など、子どもがする困った行動の多くは無視できます。
大事なことは、ひとたび無視し始めたなら無視し続けること。これは困った行動をエスカレートさせるかに見えます。子どもはさらに激しく親の気を引こうとするでしょうが、そこで折れれば、あなたはただ悪い行動を助長しただけになります。強い意志を持ち続けましょう。
これは長期的な戦略です。時間と共に悪い行ないが減っていくことは、私が保証します。そして、子どもがめそめそするのをやめたときには、すぐさまそのよい行動を褒めましょう!
「ママが電話でお話ししている間、静かに座っていてくれて本当にありがとう!」
静かに座っていたのは、15分もめそめそし続けて疲れてしまっただけだったとしても、かまいません。そこには触れないでおきましょう。すぐにその行動を褒め、それ以外のことはなかったふりをします。これは培うべきスキルです。
やるべきことをやったら、褒めることに集中する
親の本当の望みが子どものある行動をやめさせることである場合、どこに焦点を当てて褒めればよいのでしょうか。
朝からぐずぐずする、きょうだいをいじめる、汚れた服を散らかしたままにするなど、親がやめてもらいたいと思う、親をイライラさせる子どもの行動は枚挙にいとまがありません。
ここでも「ごほうび」を使う方法があります。
多くの家族を対象に広範囲な研究を実施しているイェール大学の児童心理学者アラン・カズディン博士は、その手法を「ポジティブ・オポジット(正反対のポジティブな側面に集中すること)」と呼んでいます。
つまり、「子どもにやめてもらいたい行動」(問題行動)に注目するのではなく、正反対である「やってもらいたい行動」に着目するのです。
例えば、だらだらしたり、口げんかしたりするのをやめさせようとする代わりに、朝、時間通りに着替える、きょうだいげんかをせずに夕食を食べる、前日に履いた靴下をベッドルームに散らかしておかないなど、やるべきことをやったら、褒めることに集中するのです。
ゆっくりと時間をかければ、子どもの苛立たしい行動を、その正反対の行動に置き換えることが可能です。