親か保育園か、賠償請求に優先順位はない
このように、親にも保育園にも賠償請求ができるような場合、優先順位などはあるのでしょうか。
法律上、損害賠償責任を負う当事者が複数いる場合でも、誰を相手に損害賠償請求をするのかは、被害者が決めてよいと考えられています。また、被害者は、全員に対して請求してもよいし、そのうちの一部の人だけを相手に請求してもよいとされています。例えば、保育園がしっかり民間の賠償保険にも入っていて、誠実に対応してくれそうだと判断すれば、保育園だけを相手に請求することも考えられます。
ただし、二重に補償を得ることはできないので、一方から先に賠償を得た場合には、その部分については他方には請求できなくなります。
園や親に損害賠償が命じられた裁判例もある
最後に、子ども同士の衝突事故に関して裁判になった事例をご紹介します。
後遺症が残った事例として、幼稚園で4歳の園児が他の園児に衝突されて、後遺障害等級10級に相当する外傷性の視覚障害が生じた事故がありました。この事故について、裁判所は幼稚園を運営する法人に約2000万円の損害賠償を命じました(岐阜地裁判決、令和5年4月26日)。
また、小学校での事故ですが、小学3年生の子どもが休み時間中に同級生に衝突されて転倒してしまい、頚椎ねんざや成長ホルモン分泌不全等の傷害を負ってしまった事故では、6年にわたる治療が必要となりました。スポーツ振興センターから約90万円が給付されていましたが、裁判所は、それとは別に衝突した同級生の保護者に対して約420万円の賠償金の支払いを命じています(高松高裁判決、令和3年4月9日)。