今年2月、女子バスケットボールの日本代表は世界予選でグループ1位となり、パリ五輪への出場を決めた。チームを指導した恩塚亨ヘッドコーチは「いままでの支配的で厳しい指導手法から、選手一人ひとりに主体性を持たせる支援型の指導手法に切り替えたことが勝因のひとつになっている」と語る。ジャーナリストの島沢優子さんが聞いた――。(前編/全2回)
女子バスケ五輪出場の裏にあった「3年間の学び」
パリ五輪バスケットボール5人制の一次リーグ組み合わせ抽選が3月19日(日本時間20日未明)にスイスで行われ、女子日本代表(世界ランキング9位)は、東京五輪金メダルのアメリカ(同1位)、ベルギー(同6位)、ドイツ(同19位)と対戦することが決まった。これを受けて恩塚亨ヘッドコーチ(HC)は「東京五輪の課題を解消すべく、この3年間やってきた。成長した力で勝てるか、3年間の学びをぶつけたい」と意欲を見せた。
女子バスケット日本代表といえば、今年2月の世界予選最終戦で世界4位のカナダを下し、国際バスケットボール連盟(FIBA)公式サイトで「死の組」と形容された組で1位に。パリへの切符を獲得した激闘が記憶に新しい。
その前に切符を賭けて挑んだW杯、2つのアジア大会と3つの国際大会で苦杯をなめながら、最も厳しいといわれる世界予選を突破したのだ。女子日本代表は1976年モントリオール大会以来、東京の開催枠を含め五輪に5度出場しているが、世界予選で出場を決めたのは初めてだった。
快挙を成し遂げた源泉にもなったであろう「3年間の学び」とは何か。44歳の若きリーダーを訪ねた。
開口一番に「就任直後から選手に主体的に動くことを求めました」と語った。選手個々が対峙する相手の状況を察知し自分で考え判断する。それこそが銀を金に変える最後のピースだと考えたからだ。そこに「バスケット界や今後のスポーツ界のあるべき姿を追求したかった」と勝利以外の多寡を目指したことも付け加えた。