結婚すれば、全ての不幸がチャラになると思っていないか?

野原さんは「結婚=幸せ」の図式に疑問を持っている。人間は結婚すると幸せになるという幻想に陥っていないかと。

「“幸せ”って本当にクセモノなんですよね。独身者が、結婚したら幸せになれると考える場合、それは独身である現在、自分は不幸か不遇の身であるということ。または家庭環境が最悪とか、恵まれない人間関係とかやりたくない仕事を抱えているということでしょう。で、結婚をしたらそれらの不幸がチャラとまでは言わないまでも、“結婚=全てうまくいく”に近いことを期待しているんです。特に女性は。それは甘いです」

もちろん、結婚して幸せな生活を送る人もいる。しかし、結婚してからの人生はとてつもなく長い。いつもいいことばかりとは限らないし、地獄からまた違う地獄に移行するだけのこともある。それを避けるには、相手に必要以上に期待をしないことが大事。相手を勝手に美化して嫌なところを見るたびに減点するより、最初の印象はイマイチでも「こんないいところがあるんだ」と加点していったほうがいい。

とどのつまり、人間は他者を自分の都合のいいようにしか見ていないことが多いのだ。

人が間違った要求をしがちなのは結婚だけではないと、野原さんは語る。

「友人も同じですよね。同性の友達は異性のそれより深く分かり合えると思い込んでいる節があります。お互いに価値観が合致していると思い込んでいると、ある時、食い違う部分が出ると一転、敵と見なして攻撃する事があります。また、何かを仮想敵にして、それに向かって悪口を言い合うことで仲が深まったとみなす人もいて、それを拒否するときつく当たってくることも。でも私はそういう人とは付き合えません」

人間は多面体であり、たまたま見た一面が合致したことで友情が成り立つ。合致する部分は絶えず変動するから、永遠の友情はないし、長く関係を続けようと思わなくてもいい。「合致しなければ離れていいのでは」と言う。

野原広子さん
撮影=東野りか

自分一人で歩く醍醐味と孤独は決して悪いものではない

そして「他者と一緒に過ごすのは好きだけど嫌い」とも。矛盾するようだが、他者は喜びも憎しみも楽しさも面倒ごとも引き連れてくる。

親友だから、きょうだいだから、親子だから、夫婦だから永遠に仲良くしないといけない、という“〜せねばならない”という固定観念から自由になっていいと野原さん。特に自分を傷つける、あるいは面倒だと思われるような関係性であれば。

「だからといって『死ぬまでひとりでいる!』と腹をくくったわけではないです。同じ趣味を通して楽しい時間を過ごし、たまに一緒にご飯を食べるために行き来する間柄が理想です。だから相手は男女問いません。もしパートナーが見つからなければ、それはそれでけっこう。人間、死ぬ時は一人ですから。ただ、私は今まで時間をかけて相手との関係を育んでこなかった。今後それができたらいいなと思います」」

子供も夫も親もいない。寂しいから、不安だから、友達やパートナーを探すという考えはもはや野原さんにはない。

野原広子さん
撮影=東野りか

「友人やパートナーで本当の寂しさは埋められません。幸せは、人に頼らず、自分の力で作ったほうがいい。それに友達やパートナーは意図的ではなく、自然発生的な関係性を望みます」

だから、結婚=幸せと思っている若い人(若くない人にも)に、婚活を繰り返していた昔の自分にも野原さんは言いたいそうだ。「自分一人の足で歩く醍醐味と孤独は、決して悪いものではない」と。

(取材・文=東野りか)
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