「ジム」から「時間を潰す場所」へ
まず、①カフェやファストフードなどの「時間を潰す場所」、について。
近年、同社が料金月税込3278円はそのままで積極的に増やしているサービスは、もはや、ジムの枠を超えている。例えば、カラオケ(追加料金なし、以下同)やキッズスペースなどは、明らかに運動とは関係ないものである。現状、一部店舗のみの展開だが、月額料金コミコミで全部使える。
ここから見えてくるのは、チョコザップのビジネス上の敵は「既存のジム」から「時間を潰す場所」に変わったのではないか、ということだ。
「ワークスペース」もそうだ。一枠20分で、フリーWi-Fi、フリー電源が完備されたスペースを書斎代わりとして仕事にもプライベートにも24時間利用することができる。2024年4月1日現在、全国で216店舗しかないが、公式ホームページの説明によれば、「カフェの代わりにサクッと寄れる」ことも魅力の一つとして書かれている。ここからもわかるように、明らかにカフェ的な需要に応えるものとなっている。
さらにこんな利用法もある。出先にて、待ち合わせまで20分ぐらいあるとしよう。カフェに入るのはいいが、そこまでゆっくりもできない……というとき、近くにチョコザップがあれば、このワークスペースをちょっとだけ使うことができるわけだ。
ちなみに、チョコザップには「ドリンク」というサービスがある店舗もあり、会員であれば、一回一杯、コーヒーやプロテインなどを飲むことができる。ジムでの運動後に喉が渇いたときに飲むことが想定されているが、ワークスペースと組み合わせれば、立派なカフェの誕生だ。
また、今回の発表でも取り上げられた「キッズパーク」は、例えばマクドナルドなどにある「プレイパーク」などの代わりにもなるだろう。子供がそこで遊んでいる間、親はトレーニングマシンでトレーニング、などということもあるかもしれないし、親子でちょっと待ち時間ができた時も使えるわけだ。ここではマクドナルドが標的になっているといってもいい。
チョコザップの敵は、カフェや、ファストフードのような、「時間を潰す場所」になってくるのだ。逆に言えば、近くにチョコザップとカフェがあったとして、顧客がチョコザップを選び取るようにすることが、今後のチョコザップが拡大できるかどうかを占うわけだ。
スキマ時間を「作り出す」サービスも
次に、②コインランドリーなどの「時間を潰す必要のある場所」、について。
チョコザップの展開を見ていると、「スキマ時間」に対応するだけでなく、むしろ「スキマ時間」を作るサービスも展開している。
どういうことか。今回の新サービス導入における「洗濯」の導入が、その具体例だ。これは「コインランドリー」の代わり、ということになるだろう。コインランドリーを使ったことがある人ならばわかると思うが、洗濯を待っている間は暇で、まさに「スキマ時間」が生まれる。既存のコインランドリーには、暇を潰せるような施設があることは少ない。洗濯を待つ間、家に帰るか、それともスマホでも見ているか、ということになるが、チョコザップで洗濯をすれば、待っている間にトレーニングやカラオケをする、なんてこともできる。
つまり、「洗濯」のサービスはスキマ時間を作っているのであり、これまでのサービスとは根本的に発想の転換がある。それと同時に、既存の「時間を潰す必要が生まれる場所」の対抗馬になることも表しているだろう。「洗濯」サービスを導入する店舗が増えたら、専業のコインランドリーの数は激減するかもしれない。