問題は「グループの構造の中で発生している」

3月28日に記者会見した遺族側代理人の川人かわひと博弁護士は過労死、過労自殺、労働環境問題の専門家だが、川人氏は宝塚歌劇団や阪急阪神ホールディングスの問題の本質を、次のように喝破している。

「弁護団の意見として聞いてほしい。宝塚歌劇団は、阪急阪神ホールディングス、阪急電鉄の1部門で、収益を上げている事業。20年分の有価証券報告書を分析しましたが、宝塚歌劇団は阪急阪神グループの収益の大きなウエートを占めている。

低賃金、長時間労働、年間の長時間勤務が行われるようなことがあってはいけない。劇団の内部の問題ではなく、グループの構造の中で発生している。企業体だから、収益を上げ、経営していく責務はあると思います。

しかし、自ずから企業のコンプライアンス(法令遵守)、さまざまなSDGs(持続可能な開発目標)、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、”働かせ方改革”に添った企業活動をする必要がある。劇団員の命と健康、人権を守るということを阪急阪神グループがしっかり守ることが大事です」

芸術部門の働き方改革が急務に

劇団員は6年目から委託契約になり、独立した事業者としての扱いを受けているが、実態は、劇団員を「生徒」と呼んで拘束している。こうした身分の見直し、フリーランス新法に基づいた宝塚歌劇団の抜本的改革をすべきであるが、劇団、阪急側の「再発防止に向けた取組(劇団の改革)」では、まったく触れられていない。

川人氏は「多くのファンがいて、多くの観客を魅了する演劇であっても、素晴らしい芸術活動であったとしても、それを担う劇団員が命と健康、人権を奪われるということがあってはいけない。厚生労働省も、今、芸術部門を働き方改革の重要な1部門として位置付けて、取り組んでいる。宝塚歌劇団も、まさにその対象であるべき」と強調する。

阪急阪神グループは、阪急電鉄に4月1日付で、外部の有識者で構成されるアドバイザリーボードを設置し、改革について助言を受けるという。座長は元国税庁長官の加藤治彦氏だが、むしろ、宝塚歌劇団、阪急阪神グループの問題を熟知している川人氏をメンバーに加えたほうが、よりよい改革ができるのではないか。