テクニック② 結論ファーストで書く

もうひとつ、これも文章の典型的な型ですが、とくにビジネス書や実用書では、結論を先に書くと読みやすくなると言われます。

たとえば、「会社にAIを導入しようと思ったとき、最初に見積もりをつくらせるのはナンセンスです」と最初に結論を言ってしまいます。

この結論は、意外性があればあるほど引きがあります。「え? そうなの?」と思わせたら、「なぜなら〜」と理由を続け、文章に引き込みます。

この場合は、AI導入は本来それぞれの会社の状況によってカスタマイズすべきなので、調査をする前に見積もりなど出せるはずがないという理由でした。

「シャンプーで髪を洗ってはいけません」という結論から文章を始めたこともあります。これも、どうして? と思わせたら「シャンプーは髪ではなく頭皮を洗うためのものだからです」と続けます。

ヒット作を連発する編集者さんに「原稿の書き方のコツを教えてください」と聞いたら、「まず、結論をびしっと書く。真ん中はまあ適当にどぅらららららと書く。最後にもう一度結論を書く。これで売れる」とおっしゃっていて、ずっこけました。

ただ、真ん中の“まあ適当に”は冗談にしても、最初と最後で結論を2回くり返す方法は、たしかに著者の主張がはっきりして読みやすくなります。

テクニック③ 具体的な話を盛り込む

書籍に重要なのは「再現性」です。誰かの課題の解決をするための本ですから、読んで自分もやりたいと思う。なるべくなら、自分もできるようになる。これが、ビジネス書でも実用書でも重要なポイントになります。そのためにはこんな工夫をしています。

具体例を出すと、読者は自分に引き寄せて考えやすくなります。個人的には、物事を抽象的に語ることや、抽象的に議論することはとても大事だと思っています。人と話すときは「具体的すぎるから、もう少し抽象的に話してほしい」とお願いすることもよくあるくらいです。

なんでもかんでも具体的に語るから、議論がシュリンクすると思うときも多々あります。しかし、自分が原稿を書くときはまた別です。

ある種の教養書を除き、ビジネス書や実用書で抽象論がずっと続くと、多くの場合、読み進めるのが辛くなります。何より、抽象論だけで語り続けると、課題の解決法がわかりにくくなります。

そこで私たちライターは、取材中に、「具体例は?」「事例は?」を連呼することになります。

ビジネス面接を行う女性の手
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たとえば、著者が「読書の習慣が今の自分をつくった」と言ったとします。すかさず「具体的に、読書をすることとしないことの差は何だと思われますか?」「これまで、とくに自分に影響を与えた本は何ですか?」「習慣とおっしゃいましたが、毎日同じ時間に読むのですか?」などと、しつこく聞きます。

「DXをするぞと意気込む会社ほどDXがうまくいかない」という言葉を聞いたら、「失敗事例を聞かせてもらえますか?」「逆に、うまくいった企業の事例を教えてもらえますか?」と聞きます。