相性が合わなければ、気にせず病院を変えていい

かかりつけ医と合わないと感じたらどうしたら良いでしょうか。「かかりつけ医を変えると気を悪くされないか心配」などと、相性が合わないのに我慢しながら通院を続ける必要もありません。主治医変更の理由は人それぞれ異なりますから、もし主治医を変えたいと思ったときには躊躇なく申し出ましょう。もちろん「先生とは相性が良くないので」などと、本当の理由をストレートに言う必要もありません。

「これまで通院していた曜日に用事ができてしまった」「自宅から近いところに変えたい」などを理由として挙げれば良いのです。一般的な医師であれば、患者さんから通院先を変えたいとの申し出があった場合に無理矢理引き止めるということは、まずしません。

「かかりつけ医を変えたい」と考えている人は、必ず現在の主治医に転医したい旨を伝えたうえで、転医先宛てに「診療情報提供書」を作成してもらうよう依頼してください。手間をかけるだとか、申し訳ないなどと思う必要はまったくありません。これは医師どうしで日常的に取り交わされている、ごく当たり前の書類のやり取りだからです。どうか気兼ねしないでください。

一番やってはいけないのは「黙って変える」こと

医師の立場から一番やってはいけないと思うのは、これまで診療を担当していた医師に黙って通院先を変えてしまうことです。

木村知『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』(KADOKAWA)
木村知『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』(KADOKAWA)

外来診療をしているとお薬手帳だけを持参して、「今まで通院していた先の先生と相性が良くないので、今度からこちらで処方をお願いします」と頼まれることがたびたびあるのですが、これはこちらも困ってしまいます。患者さんからすれば、先方に言いにくいという理由があるのでしょうが、お薬手帳の情報だけでは、診療を引き継ぐにあたってあまりにも情報が少な過ぎるのです。

たしかに処方内容がわかれば同じような薬を出すことはできます。しかしその処方がおこなわれてきた経緯や既往症、主治医が今まで何に留意して診療してきたのかはまったくわからないのです。これは引き継ぐ医師にとってはもちろんですが、それ以上に患者さん本人にとって大きな不利益となってしまいます。