「見返りを求めない」は難しい
相手に尽くせば尽くした分だけ、傷つくときはダメージも深くなる。だからこそ人に親切にするときは見返りなんか期待しないに限る。だけどそれって結構難しい。なぜなら、人間には見返りを求める心理が本能的に備わっているからだ。
これから話すのは心だけの話じゃなくて、ヒトの脳にそういう報酬系の回路が存在しているって話。
ヒトの脳には、腹側被蓋野を起点に、側坐核、前頭前皮質にいたる報酬系回路の重要部位がある。このことは、ヒトが生物学的にも報酬、つまり何らかの見返りを求める生き物であることを物語っている。
見返りはどんなものだって構わない。自分が相手に対して何かしてあげたうち、半分でも返そうという誠意が相手から感じ取れれば十分満足できる。しかし、こうした誠意すら見せない相手に対しては、違和感だけが募っていく。
相手がそんな態度では、こちらはがっかりするだけでなく傷つきもする。生物学的に見ても報酬系回路に逆らっているようなものだから、当然、苦しく、つらくなる。
結局、脳のためを思うと、きちんと返してくれる人に対してだけ尽くしたほうがストレスが少ないのだ。返してくれる人は、誰に言われずとも相手に報いようと動くもの。このことは、相手が誠意ある人間か否かを見極められる、ひとつのわかりやすい基準でもある。
「好き」と「好きにしていい」は違う
「好き」という言葉は、「好きにしていい」という言葉と同義語ではない。それでも、好きと言ってくれる相手をいい加減に扱う人たちも少なくない。彼らの態度はフランクを超えて無神経の域だ。フランクなのと雑なのは、全くの別モノだ。
フランクな態度には、ざっくばらんな中にも相手へのリスペクトや思いやりが必ず根底にあるものだ。対して、雑な態度とは、ただひたすら本人の好きなように振る舞っているだけ。