60代になったら、誰かのうんこを見に行こう

一方、精神的には成熟度が上がっていくため、気持ち的には落ち着いて、周りのことがよく見える状態になっていきます。

石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)
石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)

そんな時期に定年を迎えると、それまで仕事ばかりをしてきた人は、一気に社会的役割を失ってしまいます。

そうなったときに、これまでの自分を俯瞰ふかんしてみて、「ああ、自分がいろんな人から必要とされて、部下が慕ってくれたのは部長や課長といった会社内での立場があったからだったんだな」と気づく人も多いようです。

自分自身が好かれていたわけじゃなくて、立場があったからだと。そうすると、立場や肩書きなしでどう人と接していいかわからなくなり、急に認知症が進んだり、引きこもりがちになったりしてしまうことがあるのです。

活力がある男性は、新しいつながりを探しに行ったりもしますし、そこで誰かの役に立つこと、社会的な貢献をすることが自分には大事だと思い至って、介護をする側に立ってみたり、ボランティアを始めたりします。

そういう人はやっぱり元気です。反対にそういう方向へはいかず、引きこもってしまう人は、ますます社会とのつながりがなくなってしまいます。

社会的役割を失ってしまったときに、どう立ち回るかというのは、60代以降の大切な課題です。

そこで介護に関わってみるというのは、自分にとっても社会にとっても有意義なアクションになることでしょう。だから60代からは「誰かのうんこを見に行こう!」。

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