進路指導の密度

写真を拡大
南相馬市立中央図書館にて。レファレンス(調べもの)棚の前に置かれた特設台。

5人の原町高生に訊くと、原町高校は進路教育がしっかりしているのだという。

「週1ペースであります。1年生の頃から、しつこく言われてるかもしれない。総合学習の時間で大学を調べたり、こまめに面談したりとか」「いろんな人(社会人)の進路の話を聞いたり」「定期的に紙を渡されて、それに第一希望、第二希望と、詳しく書くところまで。担当の先生との面談とかもこまめにあるし」「看護系から行けばいいのか、教育系から行けばいいのか聞いたら、『それは教育のほうがいい』って言われたことがあります」

この「進路相談の密度」の差異、濃淡を、こちらは取材を通して感じていくことになる。原町高校のように、生徒に「しつこい」と言われるまで丁寧な進路指導を行う高校もあれば、「大学に送り込みさえすれば、高校の役目は完了。どんな職業に就くかは大学で考えてくれ」と教師の側が考えている——と、生徒側に思われている高校もある。後者は、いわゆる「ナンバースクール」ではない普通科高校に通う生徒たちから聞いた。

南相馬での取材は、原ノ町駅前に建つ南相馬市立中央図書館の部屋を借りて行った。取材を終えたときには閉館時間を迎えていたのだが、副館長の早川光彦さんのご厚意に甘え、高校生たちとバックヤードまで含めた「図書館ナイトツアー」を特別に体験することができた。高校生たちは、滅多に見ることができない「裏側から見た返却ボックス」に盛り上がっていたのだが、仕事柄、全国でいくつもの図書館を見てきたこちらは、南相馬市立中央図書館のレベルの高さに驚嘆した。

蔵書量や貸出冊数といった数値の話ではない。その町の人が必要とする本を並べてみせる「棚を作る力」が図抜けているのだ。「この本をタダで読みたい」というリクエストを受けてからつくる棚ではない。見た者に「そうだ、私にはこういう本が必要だったのだ」と気づかせる棚だ。気づいてくれる住民がいると信じていないと、そういう棚をつくることはできないだろう。多数撮影させてもらった写真のうち、1点だけ証左として挙げておく。多言は要すまい。この町には「頭に投資することには意味がある」と考える大人たちがいるようだ。ならば、原町高校の進路指導が熱心である理由も頷ける。

■南相馬市立中央図書館について/南相馬市
http://www.city.minamisoma.lg.jp/library/minamisomatoshokan/minamisomatyuoutosyokan.jsp

南相馬編の最後に、この町で失われた人命のことを記しておく。緩やかな傾斜を持つこの土地を、津波は最大で5キロメートルの内陸部まで浸入した。636人が亡くなり、10名が行方不明となっている。南相馬市は福島県内で最も多くの人命を失った自治体でもある。

次回は、再び三陸に戻り、大船渡の高校生たちを訪ねる。

(次回に続く)