大槌—彼女たちの共通体験
ケアマネジャー(介護支援専門員)、看護師、保健師。大槌で会った高校生4人のうち具体的に挙げられた名称は、すべて医療・福祉関連だった。「地方にはそういう仕事しかない」としたり顔で言う者は、いずれも難関だということを忘れている。直接話を聞いたこちらは「それが彼女たちには身近な仕事だから志すのだ」という印象を持っている。
それは言い換えれば、「身近なところに見える仕事がある」ということだ。4人のうち、母2人、父1人、姉1人が介護関係の仕事をしている。そのうち1組は夫婦揃って近くの老人ホームで働いている。震災が起きる前から、大槌の高校生たちには「人の面倒を見る」という仕事は身近なものだった。ぜひ読者の皆さんに(特に高校生の息子さん、娘さんを持つ方には)この機会にちょっとだけ考えてみて戴きたい。お子さんたちの「身近なところにある、見える仕事は何か」を。
大槌で会った4人にはひとつの共通項があった。最後のほうで「大人たちに、仕事の話を聞きたいか。どんな話を聞きたいか」と問うたときの答えだ。
「ほんとうにやりたい仕事をしている人から話を聞きたい。直接会って」(東さん。ケアマネジャー志望)
「学校の先生や本じゃなくて、その仕事に就いている人に会いたい」(菊地さん。美容関係志望)
「『注射を打つ』だけでなく、具体的な仕事の内容を聞きたい」(柏崎さん。看護士志望)
「保健の先生のところにまた遊びに行って話を聞いてみたい」(古舘さん。保健師志望)
これはそのまま、「TOMODACHI~」で学んだことなのではないか。連載の中で繰り返し触れていくが、この3週間の体験の中には、現地で働くさまざまな職業人たちに直接会い、仕事の話を聞くというプログラムがあった。その印象の強さを語る高校生たちは実に多かった。
この連載の最初の取材が、ここ大槌の町だった。ここで出合った高校生たちの話は、他の三陸沿岸の町でもどのくらい共通するものなのか。内陸部や、東北の都市部の高校生たちとは何が異なり、何が同じなのか。ひとつひとつ町を訪ねて確認していきたいと思う。次回は市の一部が「帰還困難区域」「居住制限区域」に指定されている福島県の町で、5人の高校生に会う。
(次回に続く)