大槌—合州国で学んだ「看護師の基本」

大槌町中心市街地の裏手高台に建つ城山体育館からの光景。「住宅地だった場所で、がれき撤去はほぼ終わりました。草が生えていますが、花を置きに来る人・手をあわせにくる人がいます。写真右側に見える建物が旧大槌町役場です」。(コメントと撮影=東 紗紀)

大槌高校2年の柏崎繭さんがなりたい仕事——看護師は、厚生労働大臣の行う国家試験に合格して資格を得る。試験の合格率は90%と高いが、受験資格を得るためには、看護師になるために必要な学科を大学や短大で3年以上修める必要がある(他にも厚労大臣指定の看護師養成所を卒業するなどのルートがある)。大槌にも、南隣の釜石にも、そのための学校はない。

「仙台の短大に行って看護の資格を取って、仙台で働いて。将来的には、30歳過ぎくらいで大槌に帰ってきたいです」

大槌から釜石まで車で20分。釜石から仙台までは鉄道で3時間と少しかかる。取材後、柏崎さんに、菊地さんに訊いたのと似た質問を送ってみた。書いてもらったのは、柏崎さんが「勉強する学校がありそう」「暮らしてみてもいい」と思うパーセンテージ。仙台は、学校=80%、暮らし=70%。釜石は学校=0%、暮らし=50%。仙台とほぼ等距離の盛岡は学校=50%、暮らし=65%。そして東京は学校=100%、暮らし=60%だった。この質問は、柏崎さんを迷わせてしまったかもしれない。柏崎さんはメールの最後にこう書き添えている。

「看護師になりたいと思う気持ちは変わっていませんが、自分が行く場所が本当に仙台でいいのか最近わかんなくなってきました(笑)」

「合州国の最初の印象は?」と聞いたときには、「食べる量が多い(笑)。自分も食べるほうだと思っていたんですけど、道を歩いている人が、2リットルのペットボトルを持ち歩いていたのに驚いちゃって」と屈託なく笑っていた柏崎さん。 では、「TOMODACHI~」では何を学びましたか。

「いろんな人と会って、その人とどうコミュニケーションを取るか。そのことを学びました。将来やりたい看護師という仕事の基本を学べた気がします。それまでは注射を打つとか、そういうことしかイメージしてなかったんだけど……」