バブルの反省が過剰な「投資忌避」を招いていた

日本の場合、過去四半世紀にわたって株価は低迷し、超低金利政策が取られ続けたため、資金を株式に投じることは、一種のバクチのように捉えられてきた。1980年代のバブル景気に乗って、誰しもが株を買った時代への反省が、過剰な「投資忌避」につながっていたのだろう。

ようやく、世代が変わって「投資」へのアレルギーが消えてきたということも、「貯蓄から投資へ」が動き出した背景にある。

日経平均株価は、ようやくバブル期の最高値3万8915円を抜き、4万円の大台に乗せた。上がり方が急ピッチだったことから「バブルだ」という声も聞かれるが、バブル当時のムードを知っている筆者らの世代からすれば、まったく当時の雰囲気とは違うと感じている。当時は、NTT株の放出が国民的な株式投資ブームに火をつけたが、株を買えば短期間に儲かるというマネーゲームの色彩が強かった。実際の売却益だけでなく、保有株の価値が上がることによるいわゆる「資産効果」もあって、華々しい過剰消費へと突き進んで行った。

東京市場/4万円を超えた日経平均株価
写真=時事通信フォト
史上初めて4万円を超えた日経平均株価を示すモニター=2024年3月4日午前、東京都千代田区

シーマ現象と呼ばれ、高級車が飛ぶように売れたことや、連日連夜、深夜まで繁華街が賑わったことが象徴的だった。企業も不動産投資などに大きく傾斜、地価高騰はまさにバブルを形成していった。

「過剰に株価が買われている」水準ではない

今、そんな景気の過熱感はほぼない。株価や不動産価格は上昇しているものの、それが過剰消費につながっているわけではない。高級品ブームはあっても、それが国民全体に広がっているわけではない。株価水準を見ても当時の株価収益率(PER)は60倍に達していたが、現在は予想収益ベースで16倍。企業の利益からみると、過剰に株価が買われているという水準ではない。

新NISAの口座開設はまだ続いており、今後もNISAブームは続きそうだ。制度が恒久化されたことで、長期にわたって投資資金が市場に入ってくることは間違いない。現状では多くの資金が世界株に流れているが、もちろん、世界の投資家の注目が日本市場に集まれば、世界株インデックスの中の日本株のウェートが高まっていく可能性はある。つまり、投資に回った資金のすべてが日本株に投資されなくても、日本株には追い風になるだろう。

もちろん、今の「貯蓄から投資」の風潮にも問題がないわけではない。むしろ深刻な課題が潜んでいる。格差の拡大だ。