「天気が悪いと体調も悪くなる」という声はSNS等でもよく見かけるが、一方それを否定する声も多い。一体、どちらが本当なのか。内科医の名取宏さんは「天候と症状の関係についての研究はバイアスがかかりやすく難しいが、体調不良の事実自体は否定できない」という――。
雨の日に窓のそばで頭痛をこらえている女性
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「天候」と「体調」は関連するか

昔から「天候」と「体調」の関連については、あれこれ言われてきました。たとえば「天候が崩れると体調が悪くなる」「雨が降ると古傷が痛む」「低気圧が近づくと頭痛がする」などといったものです。実際に周囲の人から聞いたことのある人も多いでしょうが、特に痛みに関するものが多い印象です。

ただ、こうした体験談はよく聞く一方で、天候と症状の直接的な因果関係については懐疑的な意見も少なくありません。だから「気のせいに違いない」「あまりに大げさすぎる」「繊細ぶっているんじゃないか」などと心ない言葉を発する人もいます。

でも実際、臨床の現場でも、天候による体調不良を訴える患者さんを診る機会はよくあります。全般的な体調不良であれば「気象病」、痛みに関連するものは「気象関連痛」「天気痛」などと呼ばれています。

因果関係を証明するのは難しい

気象病については、医学的に明確なコンセンサスはなく、国際疾病分類(ICD)にも採用されていません。天候が与える影響は複雑で、厳密に因果関係を証明するのは難しいのです。臨床試験では、実薬群と対照群とにランダムに振り分ける「ランダム化」、どちらに振り分けられたかを伏せる「盲検化」が行われますが、天候ではどちらもできません。

被験者に気圧が変わるチャンバー(空間)に入ってもらって気象病を再現する研究もいくつか行われていますが、サンプルサイズが小さかったり、現実の天候の気圧変化を反映するのが難しかったりして、やはり決定的な証拠は得られませんでした。

天候と症状の関連についての研究では、さまざまなバイアスが問題になります。たとえば「雨が降ると膝が痛くなる」と聞いた人が、偶然にも雨の日に激しい膝痛を体験すると、強く印象に残ります。こうしていったん先入観ができてしまうと、膝が痛くなかった雨の日、膝が痛かった晴れの日より、膝が痛かった雨の日のことばかりが記憶されるようになります。結果、アンケート調査では「天候と痛みは関係がある」と答えますが、実際に丁寧に天候と痛みを記録しても関係が見つからなかったりします。