「納税」という名前だが、あくまでも「寄付」
ふるさと納税は自分の好きな自治体に一定以上の金額を寄付すると、所得税や住民税が控除できる。さらに寄付先からさまざまな返礼品を受け取れる制度だ。納税と名付けられているものの、名目上はあくまでも「寄付」。だが、割の良い節税対策として機能しているのが実態だ。
ふるさと納税は「地方活性化」「地方創生」などの理念をもとに作られた制度のため、返礼品に以下の基準がある。いずれかを満たす必要があり、たとえば田川市の場合はこうなる。
・田川市で生産されたもの
(田川市で生産された野菜や果物など)
・田川市で原材料の主要な部分(半分以上)が生産されたもの
(田川市で生産された果物を50%以上使用して作られたジュースなど)
・製造、加工の工程のうち半分以上を田川市で行っているもの
(田川市外で生産された原材料を用いて、田川市内の工場や店舗で製造された加工品等)
・福岡県が認定する地域資源
(辛子明太子、博多和牛、もつ鍋、はかた一番どり、はかた地どり、水炊き、豚骨ラーメンなど)
ややこしすぎる制度設計
つまり、その土地と関わりの深い「ご当地もの」や「特産品」を寄付に対するお礼として送るというのが制度の趣旨。田川市に寄付をしたのだから、田川市と関係の深いものを返礼品にしなくてはいけないわけで、無関係のものを送ったら、ふるさと納税の趣旨や理念とズレてしまうわけだ。
ふるさと納税にはさらに「3割ルール」や「5割ルール」といった煩雑な規制や解釈の難しい用語が多数あり、法の抜け穴となりそうな部分もあるが、ここでは割愛する。
2008年に始まったふるさと納税は、返礼品の競争激化や理念の形骸化といった問題を経てたびたび制度改正が行われ、一層ややこしいものとなった。寄付者にとってはそれほど難しいものではないが、運営側の自治体や返礼品業者は、かなりの注意が必要となる。