首相と茂木氏が意思疎通を欠いている
茂木氏は、首相がこだわった予算案の年度内成立を確定する3月2日までの衆院通過にも異を唱えた。1日夜、独自に立憲民主党の岡田克也幹事長との間で「4日採決」でまとめようと動いたのだ。最終的に首相がこの案を退け、2日の通過となったのだが、首相と茂木氏が意思疎通を欠いていることが党内外に知られてしまった。
茂木氏は、党内外に人間関係を築くことが得意ではない。何か政治判断しても、その実現に向けての利害調整や根回しは自分の仕事ではないと思い込んでいるフシがある。
茂木氏は、4月の衆院長崎3区補選への対応でも、2月13日に長崎県連幹部に「戦う方向で準備してほしい」と要請したが、古賀友一郎参院議員ら岸田派関係者が多い県連は、次の首相候補と目される茂木氏がリードする候補擁立に慎重論が台頭し、人選が進まなかった、と3月12日の長崎新聞電子版が報じている。自民党への逆風が強いこと、仮に当選しても新しい区割りによってこの選挙区がなくなることもあって、県連の方針は現在、敗戦より不戦敗の方が政権への打撃が小さいという首相の意向に沿う結論に向かっている。
自民党は、衆院島根1区補選には元財務官僚を擁立するが、島根県連の動きが鈍く、苦戦を強いられている。衆院東京15区補選では、都連が2月に候補者を公募するとしていたが、小池百合子都知事との連携を優先させる思惑もあって、こちらも不戦敗に傾いている。
3補選とも、党本部と都県連が一丸となって戦う態勢とはほど遠い。首相周辺に補選後の幹事長交代論がくすぶる所以でもある。
「要望に沿った」のは塩谷氏ではないか
衆院政倫審は、首相が完全公開での出席を表明したことで、出席を渋っていた安倍、二階両派幹部5人を引きずり出したが、その発言は「知らぬ存ぜぬ」に終始し、真相解明に至らないどころか、政治不信を強めている。
政倫審では、塩谷氏の無責任な態度が目立った。派閥の政治資金パーティー収入を所属議員に還流(キックバック)する手法で裏金作りが慣行になっていたことについて「慣例のような形で引き継がれてきた」「資金調達が大変な若手や中堅への支援との趣旨だった」と述べ、概略を把握していたことを認めた。
会長として派閥に復帰した安倍晋三元首相が22年4月に「非常に不透明で疑念を生じかねない」と還流の中止を指示したにもかかわらず、安倍氏銃殺事件後の8月に継続された経緯については「(派内に)還付を希望する声が多く、要望に沿って還付が継続されたと理解している」と説明しながら、政治資金収支報告書「不記載」という認識がなかった、とも強弁した。
だが、この「要望に沿った」のは誰だったのか。会長不在時に座長だった塩谷氏がかかわったのではないか、という疑いが残る。なぜ自分に責任はないと言い張れるのか。