茂木氏が調整に動いた形跡はほぼない
自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた衆院政治倫理審査会の運営をめぐる混乱によって、岸田政権の統治機能不全が露わになった。岸田文雄首相(自民党総裁)が自ら政倫審に出席して全面公開すると表明することで、出欠や公開・非公開をめぐって行き詰っていた与野党折衝に解を出し、2024年度予算案の今年度内成立にメドをつけたものだが、その間、茂木敏充幹事長も、安倍派の塩谷立座長(元文部科学相)も出席者や公開方法の調整に動いた形跡はほとんどうかがえない。
首相が岸田派を突如として解散し、安倍派や二階派が追随したことで、茂木氏との距離が広がっただけでなく、解散手続き中の安倍派内の対応や意向が把握できなくなったことに、その要因があるのだろう。
「岸田サイクル」は「成果ゼロ」
産経新聞などの報道によると、異例の土曜国会となった3月2日の衆院予算委員会で、立憲民主党の馬淵澄夫元国土交通相が、自民党派閥パーティー収入不記載事件をめぐる岸田首相の一連の対応について「岸田サイクル」と命名し、「成果ゼロ」と指摘したが、これが言い得て妙なのである。
馬淵氏は、岸田首相が2月28日に衆院政倫審出席を唐突に表明したことについて「デジャブ(既視感)のような感じだ。裏金問題が出た時は、唐突に直接問題解決に至らない派閥解消を表明し、国民をけむに巻いた」と振り返る。そのうえで、「首相は、いつも初っ端は『火の玉になる』『先頭に立つ』と勇ましい言葉を発する。その後は何もせずに放置プレーで、リーダーシップのかけらもない。窮地に陥ると、目先を変えるサプライズで報道や国民の耳目をずらす。これでは結果は出ない」と批判し、「この一連の流れを「『岸田サイクル』と呼んでもいい」と皮肉った。
これに対し、岸田首相は、派閥解散について「けじめとして行った。派閥からお金や人事を切り離し、派閥の政治資金パーティー禁止というルールを設けたことに大きな意味がある」と力説した。そのうえで、「窮地に陥って目先を変えるとか、けむに巻くとか、そういう指摘は当たらない」などと怒りをにじませて反論したが、野党側の失笑を買っただけだった。