「完璧主義」にいいところなし
“完璧主義”は人生にとっても仕事にとってもいいことはない、と言われるようになってから数十年が経過しています。完璧はもともと傷のない璧(玉)のことで、欠点が少しもないことを意味します。
完璧主義の人は、仕事が丁寧、責任感が強く最後までやり抜く、質の高い結果を出すなどのいい点があるので、結果的に周りからの信頼も厚くなります。
しかし本人にすれば、強い承認欲求のために、評価を過度に気にすることになります。自分なりの完璧への道筋があるので、他人の意見には耳を貸さず、周囲の人にとって扱いにくい存在になります。
また、責任感が強いためにベストを尽くしますが、他の人にもそれを求めがちです。他の人のミスで自分の完璧さが崩れるのが許せないのです。いわんや、自分がミスをすれば自分を許せず、精神的なダメージは深刻です。
100点を目指すのは、かならずしも悪いことではありません。ただ、80点でも上等という心の幅をもっていたほうが、仕事も人生もうまく回ります。車のハンドルも障子の受け枠も、“あそび”という幅があるからこそ、スムーズに機能するのです。
「縁の下の力持ち」への感謝を忘れない
私たち僧侶がみなさんに“おかげ”の話をする理由は、それに気づけば感謝の気持ちが生まれるからです。感謝ができれば心はおだやかになります。“心おだやかに生きる”のが仏教の目的なので、おかげについてお伝えするのは理に適っているのです。
親を二十世代さかのぼった時点の先祖の数は約105万人になります。つまり、あなたを頂点にした命のピラミッドの底辺には、105万もの人がいるのです。そしてピラミッド全体を構成する親の総数は200万人を超えます。
このうち一人でも、子どもを授かる前に亡くなっていれば、あなたがこの世に生まれることはありませんでした。自分まで命をつないでくれた先祖たちのおかげで、今があるのです。
この先も、あなたやあなたを取りまく状況は変化していきますが、その中で確実なのは“今現在”。これはこれで1つの大きなピラミッドの頂点です。
生活でも、人生でも、仕事でも、あなたが過ごしている今現在には、それを支えてくれている縁の下の力持ち的な存在が、かならずいます。
それに気づき、今日一日、自分がしてもらったことを感謝するだけで、ガサガサした心に潤いが戻ります。