FRBが利下げに失敗すれば日米の金利差が10%になる可能性も

【エミン】これからアメリカのインフレが落ち着いてきて、FRBが利下げしてアメリカと日本の金利差が小さくなると、確かに円が買われます。もしくはドルが売られる理由になる。

逆に1970年代後半から80年代のように利下げが早すぎて、インフレが再燃してしまった場合、当時のボルカーさん(※)のように金利を極端に上げなければならないでしょう。それによって日本とアメリカの金利差が10%になったとしたら、1ドル200円までは簡単に動くと思う。

「アメリカの利下げが早すぎると、インフレが再燃する可能性がある」とエミンさん。
撮影=遠藤素子
「アメリカの利下げが早すぎると、インフレが再燃する可能性がある」とエミンさん。

【パックン】なるほど。

【エミン】パトリックさんがおっしゃるように現在の相場では、1ドル130円くらいが最も居心地はいい。日本の輸出企業も文句を言わないし、内需企業も耐えられる水準だよね。ただ、為替の先行きは読めない。たとえば、2023年の年末に少し円高が進んだけど、年明けにはものすごい勢いで円安に戻りました。これは新NISAの影響もあるけど、先行きはわからないから、為替の水準で投資判断をしないほうがいいと僕は思う。

いずれにしてもリスク資産に投資していたほうが資産の目減りが防げるのは確かだよね。たとえば、トルコ株は2016年以降の8年間でパフォーマンスが900%だったけど、同じ時期に通貨は9分の1になったから、プラスマイナスゼロ。でも、株式に投資せず現金で持っていたら、価値は9分の1になっていた。リスク資産に投資していれば、通貨が割安になってもお金を減らすことは避けられる。

※4 ポール・ボルカー 1979年8月6日にFRB議長に就任。当時のアメリカは第2次石油危機の影響によって深刻なインフレに直面していた。ボルカ―氏はそのインフレを抑え込むために、金融引き締めを実施した。その結果、アメリカの政策金利である実効FF金利は1981年1月に19.08%まで上昇、米国経済は景気後退を経験した。

外貨預金やFXでは資産は増やせない

【パックン】僕はFX(外国為替証拠金取引)をやったことないけど、一時期、トルコリラ建ての定期預金をすごく薦められたことはあります。

【エミン】買わなくて良かったね。

【パックン】金利が19%だって言っていた。確かに19%はおいしいけど、円に戻したときに元本が3、4割減っていたら、何の意味もないでしょ。

【エミン】そうそう。

【パックン】だから僕もエミンさんも同じ考え方です。ギャンブルとしてFXをやりたいならどうぞ。余剰金で遊んでください。そうではなく、為替を読みつつ投資をするのであれば、何かのリスク商品を利用したほうがいい。定期預金ではなく。

【エミン】預金はダメだよ。

【パックン】金利が19%であっても外貨建ての預金は怖い。外貨を保有するなら、その外貨でリスク資産に投資するという形が必要。僕は中国株が上昇しているときに、中国圏で中国株を買ってみたことがあるんです。あまり成功していないけど、失敗もしていない。

株価上昇が元安で相殺されてトントンくらいだった。オポチュニティ・コスト(機会損失)はあったかもしれないけど、資金的なマイナスはなかった。元を持っているだけだったらアウトでしたね。