コメダ珈琲店で知られるコメダホールディングスの運営店舗は、2023年7月に1000店舗を突破した。名古屋のローカル店だったコメダが全国進出できたのはなぜか。高千穂大学の永井竜之介准教授は「コメダの強みは“3つの顔”を持つことにある」という――。

国内第3位の出店数を誇るカフェチェーンに

「名古屋の定番」といえば、コメダ珈琲店(以下、コメダ)を思い浮かべる人は多いだろう。喫茶店が生活の一部に溶け込んでいると言っていいほど親しまれ、コーヒーを注文するとトーストやゆで卵が無料で付いてきて朝食にちょうどいい「モーニング」が当たり前の、名古屋ならではの喫茶文化。そのなかでも、地元民から愛され、県外から旅行や出張で訪れた人もよく利用する、代名詞的存在がコメダだ。

じつは、コメダはいまや国内第3位の出店数を誇る大手カフェチェーンとなっている。スターバックスの1901店(2024年3月5日時点)※1、ドトールグループの1273店(2024年1月末時点)※2に次いで、コメダグループは2023年7月に1000店舗へ到達しているのだ(※海外店舗を含む。2024年3月5日時点で海外店舗は39店舗)。コメダグループが500店を越えたのは2013年であり、この10年間で店舗数を倍増させる急拡大を実現させた形になる。コメダが、名古屋のローカルチェーンから、巨大な全国チェーンに変貌を遂げることができた背景について、お店の持つ「3つの顔」に注目して見ていこう。

コメダ珈琲店の「コメダブレンド」
画像提供=コメダホールディングス
コメダ珈琲店の「コメダブレンド」

郊外型で大型のフルサービス喫茶店として人気を集めた

コメダの始まりは、創業者の加藤太郎氏が名古屋市内に「珈琲所コメダ珈琲店」を開業した1968年にさかのぼる。もともと加藤氏の実家が米屋を営んでいて、「米屋の太郎」という呼び名が、「コメタ」、そして「コメダ」と変移していったことに由来した店名になっている。

創業当時、個人経営の小規模な喫茶店が乱立していたなかで、加藤氏の「いろいろな人に日常のなかで親しんでもらいたい」※3という思いから、出入りしやすい広い駐車場を備えた大型の喫茶店として開業された。この郊外型で大型のフルサービス喫茶店が人気を集め、のれん分けの形で店舗数を拡大していった。

その後、フランチャイズ(以下、FC)展開を始めていき、1975年に株式会社コメダ珈琲店を設立し、中京エリアでのFC展開を進めた。1993年にはFC運営のために株式会社コメダを設立し、さらに出店ペースを速め、2000年以降からはエリアを拡大して、2003年に関東、2006年に関西への出店をスタートさせた。