疑惑を報じた文春に批判が集まる理由

今回、文春が報じた松本人志も権力者である。お笑いの世界だけではなく、吉本興業という大芸能プロダクションを実質的に牛耳っているといわれる。その松本が、文春によると、後輩芸人たちに命じて女性たちを集めさせ、「性加害」をしていたというのである。間違いなく世に問う意義のある報道だと、私は思う。

だが、SNS上では、

「今の文春の記事が日本の為になっているとは思えない」
「記者は書いてお銭だ」
「やられた本人は数百万や何億以上のことをされとる」

などと、批判されている。

この程度のことで落ち込む文春編集部ではないと思うから、心配はしていないが、軽はずみな言動は慎んだほうがいいこと、いうまでもない。

そのへんのところを、ダイヤモンドオンライン(2月14日12:00)で、木俣正剛元週刊文春編集長が諫めている。

私は、木俣氏を歴代文春編集長の中でもトップの手腕を持った人だと、昔から尊敬している。

〈まず、『週刊文春』の後輩に意見したいと思います。それは、松本氏の性加害を初めて報じた特集記事が掲載された「新年特大号」が完売したときの竹田聖編集長のコメントです。

「今回の完売、本当に嬉しく思います。ご愛読、誠にありがとうございます。紙の雑誌よりもスマホで情報を得るのが益々当たり前となっている昨今ですが、それでも、『スクープの力』は実に大きいのだと改めて実感しています」(以下略)」〉

「嘘でも真実でも今後の人生まで変えてしまう」

〈竹田編集長はかつて私の部下だったこともあり、誠実で有能な後輩です。しかし、「自分が現役編集長でも、たぶん同じようなコメントを出したのではないか」と思うことを断った上で言わせてもらうと、時代の空気を考えれば、こうコメントするべきだったと思います。

「ジャニーズ問題以来、この国でもようやく性加害に厳しい視線が投げかけられるようになりました。今回、勇気を奮って証言してくれ、そして裁判でも証言台に立つと意を決してくれた女性に対する共感・応援が、みなさんに雑誌を買っていただいた理由だと考えています。編集部一同、権力を背景とする理不尽な行いを今後も追及していきたいと考えます。応援をぜひお願いいたします」

街には「週刊誌嫌い」の人が溢れています。案の定、ネット上にはこの編集長コメントに厳しい声が寄せられました。

「週刊誌って何ですかね。文春砲と言われているけれど、芸能人の粗探しでしょ」「結局、今回のことに限らず、嘘でも真実でも一度文春砲喰らったら、その人の今後の人生まで変えてしまう」――。

編集長は大変です。完売したら部下の鼓舞もしなければなりません。ただ、よかれと思って出したのであろうこの編集長コメントが、全く別の角度の批評を誘発してしまったことは否めません〉

私も、竹田氏のコメントを読んだとき、これはまずいなと思ったので、この木俣氏の考えには十分頷ける。