全社一丸で高付加価値商品を生み出す

高付加価値を持つ新商品をつくるには、商品企画や開発の部署だけでなく、営業も含め、全社一丸となって取り組める仕組みをつくらなければなりません。

営業担当者は、「私たちの仕事は商品を売ることであり、商品企画・開発は私たちには関係のない仕事だ」と思わず、また企画・開発担当者も「これは営業的な話だ」と考えず、会社全体としてお客様への役に立つ商品の企画の一端を担っていることを意識して、仕事に取り組むことが大切です。

ビジネス組織の概念
写真=iStock.com/metamorworks
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その結果として、高付加価値商品をお客様に提供でき、会社としての価値が高まり、売上・利益が増え、最終的に自分たちの給料にも反映されるのだ、と考えるべきです。

優れた商品によってお客様の成功を実現(価値実現)できたとすれば、会社としても利益率が大きくアップし、その利益を社員の給与として還元しようと思うでしょう。

しかし、個人的な営業力や流行などによって一時的に売上・利益が増えても、会社はそれを給与として社員に還元するのは躊躇します。

なぜなら、それは継続的なものではない、すなわち、再現性の高いものではないからです。

「この商品によって継続的に利益が出る」「高付加価値を持った商品を、高い再現性をもってつくり、提供し続けることができる」という確信があるからこそ、会社は利益を給与や賞与として社員に分配できるのです。

大切なのは、付加価値の再現性の主軸を成す「商品企画」のために、全社員一人ひとりが、「自分はどのように貢献すべきか」と考えることです。

そしてキーエンスという会社が秀逸なのは、その「貢献の仕組み」ができあがっており、日々、特別な意識をすることなく、新商品の企画に貢献できる仕組みになっていることだと思います。

超速進化組織の「PDCAサイクル」の仕組み

企業活動のあらゆる側面で仕組み化を実践し、「価値の再現性をいかに高めるか」を徹底的に追求している会社、それが私から見たキーエンスです。

同社はとくに「付加価値の再現性」の向上に焦点を当て、その実現を目指しているように見えます。

まさに、キーエンスは「付加価値再現性企業」と言えるでしょう。

ここからは、私がキーエンスで学んだ付加価値再現性企業として実行している基本的な考え方や、再現性を向上させるための仕組みについて、多角的な視点から詳細に解説していきます。

本稿で最初に紹介するのは、営業業務における1日にPDCAサイクルを2度回す超速進化組織の仕組み化です。