売り上げの大部分は実店舗、EC化率はわずか10%

特筆すべきは、影響を大きく受けたであろうコロナ禍の21年5月期、22年5月期に大幅増収増益を続けているところです。コロナ禍の21年度、22年度は一部を除いて多くのアパレル企業が業績を落としていることは広く知られていますが、その中にあって増収増益を続けているのですから世間的にもっと評価されてもよいでしょう。

コロナ禍中の業績アップの要因としてEC(ネット通販)の好調さが挙げられるブランドが多い中で、ハニーズの23年5月期連結のEC売上高は55億600万円しかありません。伸び率こそ21%増と好調ですが、EC化率は10%しかありません。

となると、コロナ禍にあっても実店舗販売が評価されていたということになり、コロナ禍明けはさらに実店舗販売が支持を高めたといえます。コロナ禍にあってEC化率もそれほど高くなくても増収増益が続けられたことももっと世間的に評価されるべきでしょう。

オンラインでドレスを購入する女性
写真=iStock.com/Adrian Vidal
※写真はイメージです

「安くて女性らしい女性服」の最大公約数

ではハニーズがなぜ好調なのかについて考えてみたいと思います。自分が知る範囲内でのハニーズ好調に言及した記事で納得できる解説を見たことがありません。おそらく、ハニーズが売れている理由がわかりにくいからだと思われます。

売り場に何かヒントが落ちていないかと実際に売り場を見に行きました。冒頭でも述べたようにほとんど機能性服はありません。辛うじて「あったかインナー」はありますが、それほど大量に売り場に並べているわけではありません。

また暖かそうな衣料品をまとめて「ハニぽか」として打ち出していましたが、それぞれの商品を見ると、起毛素材が使われて暖かそうな物や暖かそうな触感の生地が使われている物ばかりで、他社がPRするような「○○℃暖かい」といった具体的な機能性の表示は一切ありませんでした。

一部に機能性繊維を使用しているものもあるようですが、普通の冬用衣料を「ハニぽか」と総称しているに過ぎないといえます。低価格が評価されていることは言うまでもありませんが、同時に商品デザインやファッションテイストなどが評価されていて売れていると考えられます。

店内に並んでいる商品は結構多品番ですが、一見したところかなりフェミニンな印象を受けます。女性らしいテイストといえば伝わるでしょうか。ジーユーに見られるようなストリートカジュアル色が強い商品群はありません。またユニクロほどトラッドでもなく、ワークマンのようなスポーツ・アウトドアテイストもなく、本当に「女性服らしい女性服」という印象です。

また無印良品ほどのナチュラル感もありません。強いて挙げれば今シーズンのアースミュージック&エコロジーは近しいテイストがあると感じますが、価格はアースよりも500~1500円くらい安めです。安くて女性らしい女性服というところが女性に評価されているのではないでしょうか。商品デザインやテイスト、コーディネートに際立った個性がなく女性が好みそうな最大公約数の商品というふうに感じます。