むしろ「優秀ではない子ども」のほうが成功した

【弟子】頭が良い人を1500人以上集めても、そんな感じなんですか。

【猫師匠】ちなみに、この研究への参加を断られた子どもたちのなかからは、逆に大人になってからノーベル賞を受賞した人間と、世界的な音楽家になった人間が、それぞれ2人ずつ出ているよ(※2)

※2 ウィリアム・ショックレーと、ルイス・アルバレス。それぞれ、1956年と1968年にノーベル物理学賞を受賞した。

【弟子】それは切ないですねぇ。でも、これは世界的なレベルの成功者を調べたものですよね? そこまでいかないまでも、もっと身近な成功なら予測できるのでは?

CEOのIQは平均レベルだった

【猫師匠】もちろん、IQの高さは、それなりに人生に影響をおよぼすことがわかっている。ある研究では、生まれつきIQが高い人は、物理学者、エンジニア、神経外科医などの職業で活躍しやすかった。そのおかげで、IQが高い人は年収も高く、ポイントが1つ上がるごとに、平均で約2万5000円から6万円ぐらい年収が上がる(※3)

※3 ボストン大学による調査では、米国のベビーブーマー7403人を大量に追跡し、IQテストのスコアが1ポイント上がるごとに、年収がどのように変わるのかを確かめた。すると、IQと年収には一定の相関が見られたものの、現在の総資産額については、IQが平均より下の人でも、IQテストの点数が高い人と同じぐらいの裕福さである事実が認められた。IQが高い人は金銭的なリスクを取りやすく、クレジットカードの過剰な使用や、ギャンブルによる自己破産などで経済的に困窮するケースが多いのだと思われる。

【弟子】やっぱりIQが高い人が有利じゃないですか!

【猫師匠】そう思うだろうが、だからといって、平凡なIQの人が不利だという結論にはならない。

CEOのIQは平均レベルだった(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/FangXiaNuo
CEOのIQは平均レベルだった(※写真はイメージです)

2万6000人のCEOを調べたデータでは、彼らは他の労働者の平均12倍を稼いでいたにもかかわらず、IQについては平均レベルの人が多かった。なかには、平均を下回るCEOも珍しくはなかったんだ(※4)

※4 ニューサウスウェールズ大学などの調査では、2万6000人のCEOを、6000人以上の弁護士、9000人の医師、4万人のエンジニア、9000人の大卒の金融専門家と比較。その結果、「トップエグゼクティブは、私たちが思っているほど賢くはない。私たちが調査したCEOは、いかなる種類の『認知エリート』にも属していなかった」と結論づけている。