大人しい社員にだけ聞き取りをする総務部長

パワハラがあれば、その職場で働いている人は気づくはずですが、どういうわけか多くの人が見てみぬふりをします。

先日も、私の知り合いで、間もなく会社を退職する予定の女性が、総務部長に呼び出され、「君の事業部から随分と退職が相次いでいるが、何が起きているか話してくれないか」と尋ねられたといいます。

その女性社員は、「私は自分の都合で退職するだけで、何か特別なことが起きているかどうかはわかりません」と答えたそうです。

何も見聞きしたことがない。そういうわけではないでしょう。ただ、間もなく退職する本人はパワハラが原因で辞めるのではありませんし、事を荒立てるようなことを言い残すのは避けたいのです。

そのため「わからないし、何が起きているかも知らない」という返答になるのですが、この総務部長は、もともとこの女性社員ならそう答えるとわかっていて、わざとこの本人に尋ねているのです。

本当に原因を確かめたいなら、不満を持って辞めていく社員に聞けばいいのですが、それはせず、「退職をする社員に聞き取りをした」という事実を残すために、パワハラに言及しそうもない、おとなしい女性社員だけに尋ねるのです。

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写真=iStock.com/kazuma seki
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人は去り、パワハラは残った…

この総務部長は、その事業部でパワハラをする問題社員たちのことをわかっているのですが、面倒なことをしたくないのでしょう。

複数のパワハラ管理職を退治しようとすると、大掛かりな組織のスクラップ・アンド・ビルドをすることになります。かなり骨を折ることになりますし、それが上手くいくとも限りません。

この総務部長は温厚な好人物で、日頃から多くの社員に慕われていますから、こうしたことを取り立てて責める人もおらず、その結果、人は去り、パワハラは残ったままになります。