長生きする人は体重がほとんど変わらない
体調に変化があったとき、「変化がある」事実を確かめるためには、当然ながら「普段はどうか」を知っていなければできません。医師や看護師は、そのときのデータはわかるけれど、普段はどうなのか、それこそが正確な判断のために大事なことです。
平熱も人によってかなり違います。年齢を重ねて、若いころとは違ってくることもあります。中年以降は最低限、体重・血圧・平熱を定期的に測って、覚えておきましょう。
栄養不良のもっとも正確な指標となるのは体重の変化です。経年変化がわかると、何か問題が予想されたとき、より正確な判断ができます。
健啖家の先輩たちに尋ねると、若いころから現在までの体重の変化をしっかり覚えている人、ほとんど変化がなかった人の2タイプが多数です。
人生におけるさまざまな転機(結婚、転職、転居、入院)で変化したエピソードを話してくれる人も多く、私にとっては「栄養のリアル」について理解を深める学びの機会になります。
みなさんもご自身の経過をぜひ思い出してみてください。
93歳で「入れ歯なし」の人が歯を保てている理由
高齢期には、虫歯や歯周病とともに摂食嚥下機能についても相談できる歯科に通い、定期的に診てもらいましょう。
以前、先輩に「部分入れ歯にしたら味が落ちた」と嘆いて、慰めてもらったことがあります。先輩は93歳にしてすべて自分の歯を保っていました。30歳以上若い私が気の毒がられ、励まされたのです。
その先輩は年齢相応の体力と認知機能の低下があり、「暮らしの保健室」の食事会にはヘルパーさんが抱えるようにして連れてこられる人です。いらしてすぐは表情がこわばっていますが、席につきしばらくすると和んできて、料理を出すと、食材や調理法、盛りつけに対する感想の言葉が出ます。しっかり1人前を召し上がり、食事前とは別人のような活気のあるお顔になるのが常です。
お箸のもち方がきれいで、食べ方が美しい。私はお隣に座って食事をし、食後、ついグチをこぼしてしまったのでした。
「お気の毒ねぇ。歯は大事にしないと食べられなくなってしまうわ。私はずっととてもいい先生に診ていただいているのよ。最近は家に診察に来ていただくの」
本当にご立派です。みなさんも歯や摂食嚥下の診察や訪問診療もしてくれる、そしてできれば管理栄養士の勤務している歯科を見つけられたら、鬼に金棒。生涯にわたり「食べる口」を守りやすいです。