派閥解消で失うもの(2)総裁選に必要なお金

派閥を運営していく中で、派閥が勉強会を開催すれば講師の方への謝金が発生する。懇親会や夏の合宿もお金がかかる(宿泊費などは派閥が負担)。ここは参加者の実費でもいいと思うのだが、それより何よりお金がかかるのが、総裁選である。

議員内閣制の日本において、議席が多数である与党の代表が日本国の総理になる。そのため、現在では、自民党の総裁選挙=日本の総理を決める選挙となる。自民党には全国におよそ112万の党員がいる。党員に総裁候補の政策、人柄を知ってもらうべく、党では機関誌を発行したり、全国行脚して討論会を開催したりする。

総裁選は公職選挙法に定められていない選挙のため、それぞれの総裁候補を応援する各陣営でもちらしを作って郵送したり、電話作戦を行ったりする。その際に電話代、郵送代、リーフレット印刷代など莫大ばくだいな資金が必要となる。当然、全国を飛び回る遊説にかかる交通費や宿泊費もかかる。私も山形県で参議院の候補者になる前に、党員選挙を2回経験しているが、県連から交付された資金は数十万円で、約1万人の党員がいる山形県においてその十倍以上の経費がかかった。それを候補者は自腹で払う。

投票してもらうための政治活動は民主主義を支える土台となる。そのため、チラシやはがきで候補者の考えや思いを知ってもらうことや電話作戦で候補者の知名度をあげること、各陣営がそれぞれの地域で座談会などを開催し、候補者と党員の対面の機会を設けることで党員にアピールするのは総裁選勝利の戦略上とても重要だ。

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写真=iStock.com/Dragon Claws
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派閥主催のパーティー収入はこうした地道な活動にも使われていたが、今後、派閥を解消するならば、新規に政党法を制定し、総裁選挙で各候補の使えるお金は党本部が準備する必要がある。違反があれば、公職選挙法のように罰則規定を設けるような形だ。

派閥を解消するならば、新規に政党法を制定し、総裁選挙で各候補の使えるお金は党本部が準備する必要がある。違反があれば、公職選挙法のように罰則規定を設けるような形だ。

ただ、党本部からお金をもらって、総裁選を戦いますというのはどこかひ弱な感じを受けてしまう。「権力を奪取しにいく」という勇ましい行為にふさわしくない。そんな感覚を感じる政治家は少なくないのではないか。

総裁選に向けて、党の世話にならず自力でお金集めをして、その力を内外に見せつける。それにより我こそが総裁にふさわしい人物であるとアピールできた。国民からは見えにくいかもしれないが、派閥がお金集めをするパーティーを行う理由、それは自分たちの派閥から総裁候補を出すための「貯蓄」をしておくという側面もあったのだ。

総理候補は総裁選で鍛えられ、総理になるには、政策、人柄、胆力、お金……あらゆるものを乗り越えられた者こそふさわしいというダイナミズムが存在したのも確かだ。

批判を受けるのを覚悟で言えば、派閥のパーティーは個人の政治資金パーティーと同様、大きな商店を運営していく中で、また総裁選への準備という意味で必要なものだったと私は思う。

しかし、安倍派のキックバックはもとより派閥のお金の会計に不信を抱かれるようなことはあってはならず、元会計責任者が略式起訴された宏池会もことを重く受け止めなければならないのは当然のことだ。(以下、後編へ続く)

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