「想定外の質問」をゼロにすることはできない
そもそも、なぜ面接でのやり取りを暗記しようとする人が多いのでしょうか。
いままで多くの転職志望者から話を聞いてきましたが、ほとんどの人が「面接官からなにを聞かれるのかわからないので、事前に聞かれそうなことを練習することで安心して本番を迎えたい」と不安げに答えていました。たしかに、安心して本番を迎えるためにも、しっかり準備したいという気持ちはよくわかります。
だからこそ、多くの転職志望者が自分の「わからない」をつぶしていくために、面接官の質問を想定するのでしょう。変な答えをしたくない、言葉に詰まりたくないというネガティブな思いから、ちゃんと答えられるようにと回答を作成し丸暗記するわけです。
ですが、ここに落とし穴があります。
どんなに答えを準備しても想定外の質問をされることがあります。すべての想定回答を完璧に予想し、準備することは不可能です。準備して暗記していなかった質問をされ、頭が真っ白になって緊張したり、的外れなことを話してしまったりした経験がある人もいるのではないでしょうか。
実際に転職志望者の話を聞いてみると、面接官から準備していない質問をされて混乱し、「何を話したのか覚えていません……」と語る方は少なくありません。
想定外の質問に対応することが難しく、その場で対応できない。だから、結果的に面接で緊張してしまう……という負のループ。想定問答を繰り返して面接練習をすることは、むしろ自分を緊張しやすい状態に追い込んでいるとも言えます。
完璧に話せたからこそ印象が悪くなる場合も
もちろん、幸運なことに想定外の質問をされずに暗記したやり取りをよどみなく話し切れる場合もあるでしょう。ですが、だからといって内定がもらえるとは限りません。
私が講師を務めるアナウンススクールの門を叩いてきたAさん。「これまでの試験状況はいかがでしょうか?」という質問に先日受けたNHKキャスターの面接について話してくれました。面接官の質問に迷いなく答えられて上手く話せているなと思いきや、面接の最後に「暗記してきた内容は上手く言えましたか?」と言われたそうです。その場の雰囲気を想像するだけでもゾッとします。
彼女も準備万端に文章を練って丸暗記をし、面接練習を繰り返していました。
面接官は回答を覚えてその通りに受け答えができるような「完璧さ」よりも、多少たどたどしくくても素直に「自分の言葉」で話せる人に心を動かされるのです。