世界の成り立ちをロジカルに理解する

地理は、これらの現象をただ知識として知るだけの科目ではありません。地理という科目の特徴は、さまざまな現象を結びつけ、関連づけるところにあります。別のことばで言えば「世界の成り立ちをロジカルに理解する」ことだと言えるでしょう。

ここが肝心なところです。よく誤解されていることですが、地理は暗記科目ではありません。地球上に普遍的に存在する「地理の原理」を念頭におきつつ、さまざまな現象の関係性を読み解き、理解する「論理の科目」なのです。

このことは、ここ最近の共通テスト(旧センター試験)の地理の問題をみればよくわかるでしょう。かつてあったような「単純な知識を問うだけの問題」はほぼ絶滅しました。かといって、単に地図やグラフ、表などの資料を「読むだけで解ける問題」でもありません。資料を読みながら、地理の論理、すなわち地理的思考力を働かせて解くような問題になっているのです。

板書を書き写して暗記するだけの作業が嫌で仕方なかった

偉そうなことを言いましたが、実は私自身、高校生の頃は地理という科目が好きではありませんでした。

鉱物の産地とか、小麦の生産国ランキングとか、そういった板書をノートに書き写して覚えるような作業が嫌で仕方がなかったし、夏休みの宿題の地域調査も、そもそも何のためにするものなのかも理解していなかったため、ただ近くの工場にぼんやりと話を聞きに行って終わった思い出があります(先生が雑談でインド貧乏旅行の話をしてくれたりするのを聞くのは大好きでしたが……)。まさに、暗記科目だと思い込んでいたがゆえに、地理が嫌いだったのです。

眼鏡をはずして、机の上に突っ伏している女性
写真=iStock.com/bymuratdeniz
※写真はイメージです

大学に入って地理学という学問にふれると、そのような地理に対する誤解が払拭されることになりました。地理学という学問が、一見ばらばらにみえる地球上の森羅万象を結び、関連づけ、世界の成り立ちに関するさまざまな「なぜ」を追究することができる科学だと理解したからです。

海外のフィールドを歩き、「なぜ」を追究するうちに、地理嫌いだった高校生の私はいつしか地理学者と呼ばれるようになりました。