2022年から高校の必履修科目に地理総合が加わった。大阪大学の佐藤廉也教授は「地理はかつて暗記科目として嫌われていたが、地理総合は論理的思考力を問うものになっている。自然環境を含めた現代世界の成り立ちを総合的に学ぶ唯一の科目といっていい」という――。
なぜ50年ぶりに地理が必履修科目に復活したか
2022年4月から、およそ50年ぶりに高校で地理の必履修科目が復活しました。必履修化された地理総合では、地図とGIS(地理情報システム)、生活文化の多様性、地球的課題と国際協力、防災といった項目が大きな柱となっています。
なぜ今、地理の必履修化なのでしょうか。私は、グローバルな現代世界がどのように結びつき、成り立っているのかを理解すること、それによって私たちが現在立っている位置を知ることの必要性が強く認識されるようになった結果だと思っています。自然環境も含めた現代世界の成り立ちを総合的に学ぶ科目は、地理だけしかありません。
熱帯林はなぜ、いつから減少し続けているのか。経済的に貧しい人がとりわけアフリカに多いのはどうしてなのか。ロシアがウクライナに侵攻した背景は何なのか。そして、かつて人類が経験したことがないほどの少子高齢社会に、日本や先進諸国が突入しつつあるのはどうしてなのか。駅前商店街がさびれ、地方が衰退していくなかで東京一極集中が進むのはどうしてなのか。これら全ての問いを互いに関連づけながら一つの科目のなかで学ぶとしたら、地理しかありません。