わかりやすい〔条件〕から取り組もう
わたしの考える本問題を対処するポイントは〔条件4〕の選択肢(イ~オ)を先に見て、それに相当する三字熟語を思い浮かべることだ。イとオであればすぐに思い浮かべられたという人が多いかもしれない。
イは、今際の際に頭の中でこの現象が生じるという話がある。そう、「走馬灯」である。
オはさほど難しくないだろう。同じような要素の漢字を三つ並べた熟語である。たとえば、「雪月花」、「松竹梅」などはこれと同じ構成(それぞれの漢字が独立している構成)である。これは「心技体」となる。
ここまで出来れば、「走馬灯」がIIの、「心技体」がIIIの空欄(A)~(C)に入ることが分かるだろう。
さて、残ったIは「漢字しりとり」に愚直に取り組むのが一番の近道かもしれない。特に「角(C)―(C)胸」については、「角」から始まる二字熟語がかなり限られていることに着目したい。これは、「角度―度胸」になる。そうすると、ウかエは「度」を含む三字熟語であることが分かる。これはウに相当する「度外視」となる。なお、正解を導く上では関係ないが、エの意味を持つ三字熟語は「短兵急」である。
中学入試の「言語知識問題」は語彙の多寡を問う
試しにわたしの手元にある中高生用の国語便覧の「三字熟語」の欄をチェックすると、「風物詩」「度外視」「走馬灯」「心技体」のどれも掲載されていない。そういうレベルなのだ。
例年の灘の過去問には同じような、いやこれ以上にレベルの高い語彙についての問題が出題されている。例えば、季語と季節についての知識を試すもの、慣用句やことわざをさまざまな角度から問うもの、動作や様子を示す難語、接尾語などの知識の有無を見る問題など、どれもクセが強い。その系譜にある今回の「漢字しりとり」は学校側にとっては標準レベルということなのだろう。
要するに、付け焼刃の対策は無意味ということである。それまでの生活の中で、子どもたちが身に付けてきた語彙の多寡を問うているのである。人間はことばで考えるゆえ、どれだけその受験生に深い思考力、洞察力が備わっているかを測るために、学校としてはこの手の知識問題の出来不出来でチェックしたいということだろう。
そして、この手の問題を出題するのは灘に限らない。東西問わず、中学入試の国語では大人であっても苦戦するような言語知識問題がてんこ盛りだ。