アナリストたちが歓迎した「創業社長の返り咲き」
ニトリが社長交代のニュースを発表しました。ニトリホールディングス会長である創業社長の似鳥昭雄氏が新たに株式会社ニトリの社長に就任し、武田政則社長はニトリホールディングスの副社長として海外事業に力を入れるという人事です。
一般的に創業社長の返り咲きは悪いニュースだとされます。オーナー企業に多いのですが、後継社長に抜擢した人物に満足できず創業社長が返り咲くケースが多く、それは人材育成の失敗のニュースとして捉えられるからです。
ところが今回のニトリの社長交代は、逆にアナリストの間ではプラスのニュースとして捉えられています。むしろ武田社長の力量を買って、もっと重要な局面にあたらせることで、ニトリグループ全体が大きく躍進することが期待される人事だと捉えられているのです。今、ニトリに何が起きていて、これからどのような戦略を取ろうとしているのかについて解説したいと思います。
ウォルマートを抜いて連続増収増益の世界記録を持つ
ニトリホールディングスの上場後の増収経常増益は33期連続で、アメリカのウォルマートを超えて上場企業が持つ連続増収増益の世界記録を持っています。昨年も数字としては増収増益なのですが決算期を3月に変更した13カ月の変則決算になっているので連続記録としては取り上げられてはいないようです。
さて問題は11月に発表した今年度の上期決算なのですが、前年比で売上高▲1.5%減、経常利益▲19.2%減という状況でした。下期の経済環境が大きく変わらないとすれば、今年度、ニトリは実質減益、場合によっては減収減益に陥る可能性があります。
この状況に陥った原因となる問題はふたつあります。ひとつは国内の売上成長余地がもうほぼ飽和状態になっていること、もうひとつが円安で、海外で開発した高品質で安価な家具やホーム用品を日本で販売するというビジネスモデルの利点が崩れたことです。
国内ではホームセンター大手の島忠を買収したことでニトリのシェアはむしろ高まっているのですが、国内796店舗と新規の出店余地はかなり飽和してきている状況です。少子高齢化の日本ですから長期的に見てももう国内での増収の余地はないと考えるべき転換点に来ているわけです。