アジアで成長させる以外に道はない

一方で2022年に始まった円安は、2022年の段階ではまだ米ドルだけが高い傾向だったのですが、2023年はアジアの大半の通貨に対して円が安いという円安独歩の傾向に変わりました。アジアで商品を開発して輸入するニトリのビジネスモデルにとっては大きな逆風です。

実際、ニトリの2024年3月期の上期決算の減益要因分析を見ると、粗利改善の営業努力の116億円が、為替影響の▲247億円で帳消しどころか倍返しの規模で収益の足を引っ張っている状況です。今のビジネスモデルで頑張れるところはすべて頑張った結果、それでも増収増益記録は円安で実質的に終焉しゅうえんしてしまうというのが今のニトリのおかれた状況です。

ではニトリはどうすればいいのか? ファーストリテイリングやセブンアンドアイなど、他の決算好調な小売業を見れば、戦略の方向性は明確です。アジアで成長させる以外に道はありません。

ファーストリテイリングが運営するユニクロは、今ではアジアが売上の過半を超えているのですが、その結果として高利益率のアジア事業が円安による日本事業の利益減の穴埋めをしてくれています。

地球儀のアジア付近
写真=iStock.com/Anson_iStock
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海外の店舗数がどんどん増えている

それと比べるとニトリの海外展開はまだまだ発展の余地が大きい状況です。国内796店舗と比較して海外は148店舗。ここをいかに早く、国内と同じ規模に持っていけるかがこれから先の大勝負になるわけです。

ちなみにニトリの海外店舗は中国が79店舗、台湾が58店舗で、このふたつの国と地域でほぼ大半を占めています。他にはマレーシアが8店舗あるのですが、それ以外の国々ではまだプレゼンスが大きくはない。ここがアジアの幅広い国々に一定の橋頭を築いているユニクロとニトリの現在地の違いです。

そこで注目するのはニトリホールディングスの下期の海外の出店計画です。すでに進出に成功している中国・台湾・マレーシアで29店舗を新規出店するのは手堅い投資だとして、特筆すべきはこれまで店舗のなかった韓国に新規に4店舗出店し、これまで1店舗だったタイにも4店舗出店することです。4カ国目、5カ国目に戦線を拡大するわけです。