だから歌舞伎町の闇が明けることはない
東出さんたちと一緒にしてはいけないが、ホストにハマる女子のキーワードの一つに「完走」がある。自称ホス狂いの女の子の、SNSを見てみなさい。たいてい、完走という言葉が散りばめられているから。
担当ホストへの売掛金を払うため、地方の風俗店などへ出稼ぎに行く。1カ月とか3カ月とか、金額によって期間は違うが、その間はただひたすらに客を取る。
出稼ぎを終えて金を握りしめ、担当ホストの店まで支払いに行くとき、彼女らは「完済」ではなく「完走」した自分を自分で誉めてやりたい、と全身をうるうるさせているのだ。
彼女らは指名ホストをナンバー入りさせた、推しを今月のトップにした、という彼らの実績になること以上に、そのために私は完走した、また次も完走を目指す、と完走できる自分自身を目標とし、自分自身に夢を見て恍惚として興奮している。
売掛制度をなくさないで、私たちの頑張りどころをなくさないで、と願うのは実は客の女の子たちだったりするから、歌舞伎町の闇が明けることはないのだ。
いや、東出さんはホストではないから女たちを働かせ、女たちに金を払わせないが、女たちは東出さんとの生活を完走したくて山小屋にいるのだ。
彼女らは「不思議」の部分にベットしているのだから、世間一般的な幸せを配当してもらえなくても、負けた、損したとは思わない。
国が「まともな人」と判断している
さて、今現在の東出さんは狩猟をしていることがよく知られている。狩猟には、猟銃がいる。実は私も2挺、所持しているのだが、この銃砲所持許可証は、なかなかに取得と更新が面倒、大変なのだ。
実技試験、筆記試験、精神科医の診断書などなど手続きも書類もいろいろ手間がかかるが、なんといってもメインは警察署による身元調査であるよ。
薬物や酒の中毒者ではない、精神に疾患がない、反社会的勢力と関わっていない、人に危害を加えたり、自傷の恐れがない、といった至極当たり前の条件もある。本人が当てはまらなくても、これらに当てはまる同居人がいてもだめなのだ。
さらに借金がないか、人間関係のトラブルを抱えてないか、酒癖が悪くないか、家庭内に問題はないか、暴力的だとかカッとなりやすいとか噂されてないか、こういうのもみっちり調べられる。物が物だけに、ここまで厳格厳密でも、まったくかまわないのだが。
つまり東出さんは、人格的にも生活環境にも問題はなく、猟銃を所持していても大丈夫という公安委員会のお墨付きがあるわけだ。
絶対に所轄の警察署は東出さんの近しい人に、素行についてかなり突っ込んで聞き込んでいるはずだ。みなさん揃って、「問題ない人です」と答えているのだよ。
なんだかんだで、つまり彼は「まともな人」なのである。良識と常識、そして人望もなければ、「あんな奴に銃を持たせるな」という人がいるはずだ。
彼の「不思議」に惹かれる女は、その「当然」の部分をも見ているのだ。