20~30代で仕事を辞めてしまうのは圧倒的に不利という現実

景気が良ければそれでもいいのだが、今の社会では共働きはマストであるがゆえ、私はそのつど、「不利になるから辞める前に考えようー!」と、相談に来る女性たちに話していたものだ。

これは企業の問題、働き方の問題があるので今回は深堀りしないが、黒木メイサのブランクからの復帰は、簡単ではないだろう。

しかし、黒木メイサはデビューして8年後、ようやくドラマ主演もできるようになった段階で授かり婚したわけで、一般人女性も第1子を産む平均年齢は31歳(※1)であり、大卒なら社会人8年目に当たるので、結婚に踏み切ったタイミングとしては変わらない。

【図表】第1子出生時の母の平均年齢
出典=厚生労働省「令和4年(2022)人口動態

「ならば、女性はいつが結婚しどきで、産みどきなのか?」という、芸能人だけじゃない、働く女性全般に言える普遍的な悩みを突き付けてくる。

女性はどのタイミングで結婚し出産すればいいのか?

いくつものプロジェクトをこなし、「自分のキャリアを確立してから」と決めて結婚や妊娠を後回しにした結果、タイムリミットを過ぎてしまったと泣く女性たちも見てきたし、キャリアを積む前に専業主婦になり、離婚や夫のリストラによって再び社会に出るも、アルバイト以外に職が見つからないという切実な相談もたくさん受けてきた。

今はユーチューバーになったり、SNSで稼いだりもできるが、よっぽどのセルフプロデュース能力がないと難しいし、継続的な収入を得るには起業するのと何ら変わりはない難易度だと思う。

よって一番安全なのは、仕事を継続しながら欲しいプライベートを手に入れるという曲芸師みたいなスキルなのだが、多くの企業が「働き方改革」を掲げるも、人生設計はしょせん個人に委ねられているわけで、女性たちのキャリア実現と幸せなプライベートの両立はいまだ最適解がない。これは少子化にもつながる社会問題だと言える。

ただ、あくまでも現状をサバイブする上で大切なのは、「できる限りブランクを空けないこと」と、「キャリアは意地でも手放さないこと」だと私は思っている。

大女優が、プロの監督、プロの演出家、プロの脚本家やプロのメイクさん以外にもたくさんのプロに手をかけられて作られていくように、我々一般の仕事人も多くの人の手や仕組みによってスキルを与えられ、提供された場で切磋琢磨せっさたくますることによってキャリアを積んでいく。それを結婚や出産で手放す前に、一度ロングスパンで将来を見据えてみること。それが、生きるバリエーションを増やすことになるのは間違いない。残念ながら、現在のところは。