中居正広から嵐へ、司会が移行した2010年代
この背景として確実に押さえておく必要があるのは司会者だ。2006年から2009年までSMAPの中居正広が務め、そして2010年代のうち9年は嵐やそのメンバーが司会を担当した(2015年は井ノ原快彦)。出場歌手だけでなく番組に深く関与していったのである。
このとき、中居を押しのけるように嵐が司会に就任したことにも、留意が必要かもしれない。
というのも、先日公開されたTBSのジャニーズ問題の検証では、以下のような印象的な証言があるからだ。
当委員会のヒアリングに対して編成局と制作局を経験した社員は次のように語る。
「TBSは、数年前まではジャニーズ内の派閥対立に巻き込まれて忖度したり、圧力を感じてきた歴史だったと思う。同じジャニーズ事務所でありながら、全くの別会社のように連携を取らず、お互いを敵対視している争いに振り回されてきた。バランスを保つために右往左往する先輩たちを多く見てきた」
TBSホールディングス「旧ジャニーズ事務所問題に関する特別調査委員会による報告書」2023年11月26日
具体的に明記はされていないが、おそらくこれはTOKIOや嵐を手掛けた藤島ジュリー氏と、SMAPやKis-My-Ft2を手掛けていた飯島三智氏との派閥対立だと考えられる。
「紅白」にこの派閥争いがどのように影響したかはわからないが、Kis-My-Ft2がはじめて出場したのは、飯島氏がジャニーズを離れ、SMAPが解散した後の2019年だった。TBSと同様に、2010年代の「紅白」がこの派閥争いに強く左右された可能性はあるだろう。
ジャニーズ依存を強めた10年間の視聴率
2010年代の「紅白」とは、状況的にジャニーズへの依存を強めていった10年間だったと言える。
それにどれほどの効果があったかはわからない。その10年間、視聴率はほぼ横ばいで推移しているからだ。もちろんネットメディアの浸透でテレビ離れが続くなかで、ジャニーズによって視聴率の低落を押し止めていた可能性もある。実際に、旧ジャニーズが不在だった今回の「紅白」は第1部は29.0%、第2部31.9%と過去最低の結果となった。