基準の明確化が芸能プロダクションとの健全な距離を生む

「紅白」に必要なのは、より明確な選考基準だ。近年の「紅白」はビルボードチャートと似た傾向を見せている。ビルボードがその年のヒットをポイント化して発表する「Artist 100」のうち、「紅白」に出演したアーティストは2021年は23組、2022年は29組、2023年は25組と出演者の半分程度で推移している(「Artist 100」の30位以内に限ると2022年は19組、2023年は11組)。ビルボードチャートがNHKの調査(「世論の支持」)と近い結果になったということかもしれないが、ならばいっそのことビルボードチャートを用いる形でより明確な基準を打ち出すこともひとつの手段として考えられる。

そしてそうした策が、芸能プロダクションとテレビ局の間にしっかりとした距離を作ることにもつながる。というのも、ジャニーズ事務所はバーター(抱き合わせ)を使いこなしてメディア露出をコントロールしてきたが、それはほかのプロダクションも大なり小なりやっている手法だからだ。

よって、たとえジャニーズが解体されても問題が根治されたわけではない。これまでの業界の慣習や構造を見直さないかぎり、類似の問題が生じるリスクは残ったままだ。公共放送であるNHKが、この構造にメスを入れるためにも「紅白」選考基準の明確化は欠かせない。

近年の「紅白」は、「芸能」と「音楽」のバランスを取ることに腐心してきた。演歌勢の余興的な賑やかしは、「芸能」の需要を満たそうとする最たる演出だ。しかし公正な基準で音楽と向き合うことで新たな扉が開くはずだ。

実際、その可能性は今回はっきりと見えた。それがYOASOBIのステージだ。

YOASOBI「アイドル」のステージはインパクト大だが…

今回の「紅白」のハイライトは、間違いなくYOASOBIのステージだった。昨年日本でもっともヒットした曲「アイドル」を披露し、出演していた日韓のアイドルが勢ぞろいした。このステージに出演したのはSEVENTEEN、乃木坂46、NiziU、BE:FIRST、NewJeans、JO1、Stray Kids、櫻坂46、LE SSERAFIM、MISAMO、橋本環奈、anoだ。最後には全員でダンスを踊り、全員が「アイドル」としての姿を見せつけた。なかでも世界的に大ヒットしたNewJeansのメンバーが、ヴォーカルのikuraの横で楽しそうに踊っているのが印象的だった。

そして番組全体のテーマは「ボーダレス」だった。旧ジャニーズ勢のいない「紅白」において、NHKは日韓のアイドルを揃えてこのテーマに回答した。それは同時に、「旧ジャニーズを出さずにどのように『紅白』をつくるか」という問いへの回答でもあっただろう。たしかにそれは、ジャニーズの影を吹き飛ばすようなインパクトがあった。だが、それをもって「紅白」の「禊」としていいわけではない。

 
【関連記事】
NHK大河ではとても放送できない…宣教師に「獣より劣ったもの」と書かれた豊臣秀吉のおぞましき性欲
なぜ皇室に1男2女をもたらした「良妻賢母」が嫌われるのか…紀子さまを攻撃する人たちの"本音"
笠置シヅ子の実母は母親であることを認めなかった…17歳で自分が養子と知った昭和のスターの壮絶な生い立ち
お金が貯まらない人の家でよく見かける…1億円貯めたFPが「1日も早く捨てるべき」という2つのモノ
「脳トレはほぼ無意味だった」認知症になっても進行がゆっくりな人が毎日していたこと