新卒入社から会社に尽くし、40年前後にわたり勤め上げてきた人にとって、役職定年は受け入れがたい人も多く、特に男性はガッカリするようです。「やっと部長になったのに、あっという間に部下に戻るのかよ」と。おまけに給料まで下がるので、ダブルでガッカリです。長く会社員だった人は、会社の中での職位が自分のプライドと密接に繋がっているため、職位が下がることで、プライドが傷つけられます。それは、給料が下がることより辛い現実かもしれません。ただ、ガッカリしてしまうのは、職位が上がることがキャリアアップであり、定年がキャリアのゴールだと捉えているからだと、私は考えています。

定年は人生の通過点にすぎません

今は人生100年時代。定年後も働き続ける時代です。キャリアのゴールを60歳とせず、それ以降の人生プランを考えれば、定年は人生の通過点にすぎません。定年したら働かず、悠々自適に遊んで暮らすという考えもいいでしょう。ですが、そのうち暇になったり、家に居たら邪魔者扱いされるなどして再び働き出すケースもあります。それならいっそ、役職定年や早期退職を利用して、60歳以降の人生に向けた準備を始めることをお勧めします。

大企業を役職定年すると、定年までは部下の立場になって働くことになります。定年して会社を去った後は、仕事の選択肢は大きく2つに分かれます。1つは、中小企業に転職するパターン。もう1つは、自営業やフリーランス、小さな会社をつくるなど、独立開業するパターンです。いずれの場合も、大企業と違い、企画や営業、場合によっては経理も自分で担当する必要があります。大企業から中小企業へ転職すれば管理職に返り咲けるかもしれませんが、中小企業では管理職もプレイングマネジャーである場合がほとんどです。

フリーランスや自営業を選んだ場合は、それこそゼロから自分の力でつくり上げなければいけません。大企業でのマネジメントスキルだけでは通用しなくなるのです。長く管理職としてマネジメントに徹してきた人が、定年後に突然、営業や開業の実務ができるかといったら、かなり難しいでしょう。また、役職を解かれた人は部下だった人と同じ立ち位置になるはずなのに、いつまでも上司時代の感覚で部下に指示をしてしまう人がいますが、それも独立したら通用しませんので、命令ぐせは取り除かなければいけません。

そこで、管理職を解かれ平社員になる現実をピンチではなくチャンスと捉え、実務を一から学び直し、定年後に活かしてほしいのです。給料をもらいながら定年後の働き方の予習ができるわけですから、チャンスとしか言いようがありません。大企業に勤めていれば、給料が下がったとしても市場相場から見れば高いはずです。大企業で課長・部長職だった人は、多くが年収1000万円以上だと思います。役職定年になって、年収が300万円下がったとしても、まだ700万円はあります。

一方で、日本の約9割にも及ぶ中小企業で働いている人の多くは年収700万円に届かず、年功序列でもありません。日本人の平均年収は400万円台です。そういう意味でも、役職定年になっても高い給料がもらえて、役割や仕事があり、退職後の準備もできるのは恵まれていますよね。

50代以上はキャリアデザインの意欲がやや低い!